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第46話 叔父さまとの対面3

「この通り、不作法な父で失礼したね、ヴィクトリア」


「なんだと、ノーラ。まだ失礼はしていないぞ」


 おどけたように言うギャレットを見て、とても親子仲がいいのだということが分かる。


「父はいつもこうでね、困るのだ。相手の都合を考えずに行動するから」


 ヒューバートは苦い顔である。遠慮知らずの父親に苦労をさせられているのだろうか。


「なにを言うのだ、ヒューバート。まだ会ったばかりのヴィクトリアに変なことを吹き込むのはやめてくれ。この通り、友好的に話していたというのに」


「……引いているみたいだけれどね。楽しいのは父上だけでは?」


 アーロンにまでそう言われて、ギャレットは参ったな、とまたがははと笑った。


「そういえばノーラ、ヴィクトリアをお前の妹会とやらに誘っているらしいな? お前はすぐそういう悪癖を出すが、相手の迷惑を考えた方がいいぞ」


「父上にだけはそう言われたくありません! それに、ヴィクトリアは私の妹会に参加してとても楽しそうでした。きっと入会してくれると思います!」


「そうなのか? 私は違う話を聞いたぞ? あまり無理強いはしない方がいいのではないか?」


 ヒューバートの言いようが、例の令嬢たちの騒ぎを指しているように思える。確かに、あの一件のことを思い出すと妹会に顔を出すのはどうかと考えてしまうけれど。


「ノーラ姉さんの押しの強さは父上譲りだよね。ちょっと自覚したほうがいいんじゃないかな?」


「おっ、アーロン。しばらく見ないうちに生意気な口を利くようになったじゃないか」


「ええ、父上の血でしょうかね? いい迷惑です」


 ヴィクトリアのことは置いてけぼりで話をしているその様子は、仲のよい家族そのままで、見ているだけでほっこりしてきた。

 以前、宿屋の一階にあった使用人用の狭く寒い部屋の中で、自分にも家族あったら、と想像するときの温かい家族の姿がそこにはあって、少し羨ましくなってきた。


「ギャレット様、そろそろお席の方に……。皆様既にお席についております」


 侍従がしびれを切らせたように言い、ギャレットは周囲を見回して状況に気付いたのか、そうかそうかと気楽に言いながら自分の席に戻っていった。ヒューバートたちもそれに続き、ローズ王妃はギャレットが座っていた席に戻った。


「……不思議な方よね、人の懐にふっと入り込むのがお上手なのよ」


「え、ええ……そんな雰囲気の方ですよね」


 穏やかに言うローズ王妃に対して、素直に返せなかったのは、その懐に入り込まれて子までもうけたのか、と考えてしまったからだ。


 秘密にされていると聞いたが、それは公然の秘密ではないかと勘繰ってしまう。それが証拠に、先ほどギャレットがこちらに居たとき、ローズ王妃とギャレットを見比べて意味ありげなこそこそ話をしているらしい者がいたのを見てしまった。


(仲よさそうな家族に見えたけれど、そうよね、色々と事情があるわよね)


 しかし、そんなことを考えているとは顔に出さないように努めてローズ王妃と会話しなければ、と思ったときに大広間の脇にある扉前から声が響いてきた。

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