表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/72

第14話 殺し屋さん、護衛をしてよ!

「うぅーん」


 今度はヴィクトリアは腕を組み、唸りながら知恵を絞った。自分を狙った殺し屋さんであるという奇妙な縁だが、自分の命を救ってくれたという縁もある。幸せになってもらいたい、と言うと大袈裟だが、少しでも自分の思うように生きて欲しい。


「そうか……! ぴったりの仕事があるわよ」


 ヴィクトリアはぱちんと指を鳴らした。


「……私の護衛ってどう? 実は不安なのよね、だって、あなたを雇って私を殺そうとした人がどこかに居るんでしょう? これからだって狙われる可能性があるわけで……」


「自分の身分を忘れているようだが、お前は王女なんだぞ? 衛兵でも騎士でも、お前の護衛についてくれるだろう?」


「そんなよくも知らない人たち信用できないわよ。いつ、誰に雇われて私を狙いに来るか分からないもの」


「それは疑り深すぎないか、と言いたいところが、まあ、王城ではそのくらい警戒する方がいいかもしれないな」


「あなただったら信用できる」


 はっきりと言い切ると、殺し屋さんは面食らったような顔となった。それから、まるで子供のように、なにかを面白がるような笑みをこぼす。

 それは、ヴィクトリアの命を助けたときの笑みに似ていた。


「確かに、王女なんてこれ以上ない金づるだ」


「そうでしょう? 私だってそう思うもの! それに、殺し屋よりも警護の方が気分がいいでしょう?」


「気分……そうだな。まったく、本当にお前はおかしな奴だな」


「よく言われるわ。でもそれは私が高貴な血筋の特別な娘だったからなんだわ。やっぱり生まれつき人とは違うと思っていたのよねぇ」


 そう言って腰に手を当てて、悦に入ったように頷くのを見て、


「ほんっ、とうに、ひと言多いなお前は」


 殺し屋さんは、今まで見たことがなかったような柔らかな表情で笑った。

 それを見て、かつて失ってしまった友人を思い出す。本当にひとりよがりも甚だしいとは自分で知っているのだが、少し報われたような気がした。


「じゃあ、名前を教えてよ殺し屋さん」


「名前?」


「そうよ、名前。やっぱり別の名前で呼ぶのはなんだかへんてこな感じがするし」


 殺し屋さんは少し迷ったように瞳を泳がせてから、


「ユアン……」


「ユアンね、分かったわ! じゃあ、これからそう呼ぶことにするわ」


(また偽名かもしれなけれど、まあいっか!)

 そうして殺し屋さんことユアンは、ヴィクトリアの護衛になったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ