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炎の男

「もし良ければですが…この流れで話してみませんか、不知火さん。」

ごく自然に、スタッフさんが不知火さんに話を振る。


「……?! ……。 ……///」

スタッフさん=精神科の看護師さんなので、決して無理強いはしていない。

しかし不知火さんはみるみるうちに顔を真っ赤にしていった。



小さな火花が、大きな火事になるように。



「不知火さんって卓球の時は話すのに、グループトークの時はお話しされませんね。」

「遅刻してくるんで自己紹介の時もだいたいいないっすもんね。」

「もしかして…人前で話すの苦手?」



「……そうです。」



不知火さんがようやく、絞り出すようにして話し始めた。


「自分は……人前で話すのが非常に苦手です。

こんな自分でも子供の頃は目立ちたがり屋で、クラス委員や司会を進んでやっていました。


でも……中学生の時だったかな、ある暑い日にいつものようにクラスメイトの前で何かの発表をしていたんですね。


そしたらある女の子と目が合ったんです。

静かで目立たない子でした。

でもとても可愛らしい子でした。


その瞬間、初めて自分の顔が熱くなるのを意識したんです。


『こんな顔じゃ恥ずかしい』

強烈に思いました。


それからというもの、人前に出るとどうしても顔の赤みが気になってしょうがないんです。


お医者さんにも『気にする程ではないし、病気によるものでもない』と言われました。

それでも自分の顔は赤くて恥ずかしいんです。


昨年までは工場でボルトを締めたり、車を組み立てたりしていれば良かった。

でも今年からは違う。

人事異動で開発に回されてしまいました。


上の役職の人や子会社の人の前でプレゼンをしなければならない状況に置かれ、会社どころか家から出る事も怖くなりました。


自分はこの赤ら顔を、誰にも見せたくないんです!!」



不知火さんは強く話し切った。

きっといっぱいいっぱいだったのだろう、握りしめた拳が震えていた。


まさか中学の初恋がこんな大事になるなんて、とても繊細な人なんだと思う。


ふと、頭に過ぎるものがあった。

「あ、あの、不知火さん。」

「なんでしょう?」


「グリーン系の化粧下地を使うのはどうでしょうか…?」

「化粧下地?」


「私もニキビ跡が酷くて毎日顔面工事なんですけど、下地クリームでカラーコントロールができるんです。

だから、治すのは無理でももしかしたら隠すくらいならできるんじゃないかって。」


「隠す……?」



「それ良いじゃなぁーい?」

「「「「?!」」」」



いつの間に入ってきたんだろう、Dr.大鎌が現れた。


「ど、Dr…。」

銀山さんの顔が露骨に歪む。


「今の化粧品は優秀だからねー。

てかそもそもアナタはそこまで赤ら顔じゃないし。

男が化粧品使うのに抵抗があるなら、クリームで保湿して肌を厚くするのはどうかしら?

肌が薄いと血管が透けやすくなるし、乾燥ケアなら髭剃りコーナーにもあるでしょ?」


「さすがオカマ、化粧にもヒゲにも詳しいのか…。」

「なんかお言いになって?!」

「すんませーん。笑」


「まぁいいわ、家族のためって言えば店員だって変な顔しないし、私が付き合ってあげても」「結構です。」

「そこだけ即答じゃない!」

「…でも、ありがとう、めいこさん。」

不知火さん

社交不安障害。

人前で何かをすることに極度のストレスを感じてしまう。

少人数では負担にならないので、友達とワイワイやるのは好き。

趣味は一人カラオケ。

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