第57話
連載再開しました。
「君は、何を隠してるんだ?」
アルジェの沈痛な表情を見逃さず、ロイスは問いかけた。
アルジェが、はっと我に返って無表情に戻った。
「誰も知らないような…誰にも言えないようなことを隠してるんじゃないか?」
真摯な眼差しのロイスが追及すると、アルジェは薙刀を振りかざした。
「貴様に、何がわかる…!」
殺気立って凶器を向ける敵に対し、ロイスは身じろぎさえしない。
「ロイス!」
「危険ですわ!」
ガイとナヒロは両者の間に入ろうと、駆け出そうとする。
しかし…
それを、サラの背中が立ちはだかって止めた。
「お、おいっ」
「ロイスを、信じてください」
焦って身を乗り出したガイに、サラはロイスの後ろ姿を見据えて答えた。
そして…
キィィーン―――
薙ぎ払われた凶刃を、瞬時にロイスは剣で受け止めた。
「俺は、一人じゃないから…。守りたいものがあるって、大きな声で言えるから…」
言葉を続けながら、剣の持ち手に力を込める。
「絶対に負けない!」
ロイスは強く言い切って、渾身の力で敵を押し返した。
「っ!」
思わぬ反撃に、重心を乱したアルジェが後方へよろめく。
その隙を見逃さずロイスは、相手の懐に飛び込む―――
ドンッ―――
「ぐぁ…っ」
ロイスの拳によって腹部を殴られ、アルジェは卒倒した。
すかさずロイスが間合いを詰め、仰向けに地へ伏したアルジェの首筋に剣をかざした。
「抵抗、しないでね」
ロイスの左足は敵の武器を踏み付け、反撃をも許さなかった。
「すげぇ…」
瞬く間に形勢を逆転してみせたロイスの姿に、ガイはただ驚くばかりだった。
「あれが彼の、本当の力なのですね」
ナヒロもわずかに目を見開き、戦況を見守ることにとどまった。
「守りたいもののためなら誰よりも強くなれる…。それがロイスの強さです」
敵と対峙する背へ信念の眼差しを向け、サラは言った。
「これからも同じようなことを続けるって言うなら…俺は、キミを…」
ロイスの表情は曇り、瞳は強い輝きを持もってアルジェを捉えた。
身動ぎさえできず、アルジェは切っ先の感触に覚悟を決める。
その時…
ヒュッ―――
「っ?!!」
目にも追えぬ速さで何かが、ロイスの足元へ飛んできた。
掌に容易く乗るであろう薄墨色の球体は、地に着くとたちまち白煙を発した。
思わず剣を引き、ロイスは仲間のもとまで後退する。
「煙幕ですわっ」
ナヒロの声で前方を見遣ると、すでにアルジェの姿はすで隠されていた。
「逃げる気かっ」
「むやみに動いてはいけません。煙に乗じて反撃されますわ」
荒ぶるガイを、ナヒロが押し留めた。
「ロイス…」
サラは、立ち尽くすロイスの背中を不安げに呼んだ。
無言のまま白煙の一点を見つめ、ロイスはただ硬く剣の柄を握りしめた。