表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/59

第51話

「お前が犯人か」

身構えたヴァルは、確信の問いかけを投げる。

「まあな。俺としては、もっと豪快にやりたかったんが…命令に背くわけにはいかないんでね」

青年が、水を撥ねさせながら歩み寄ってきた。

「命令とは、誰のだ」

左足を半歩、ヴァルは後方へ動かす。

すると、青年が仏頂面で立ち止まった。

「質問責めかよ…だりぃな」

あからさまに大きく息をつき、腕組みをしている。

「俺の名はエイセキ。ディスト様にお仕えする者だ!」

エイセキと名乗った青年の言葉に、ヴァルは目を見開いた。

「今日は、アルジェの命令で魔族捜しに来た…お前のような者をな」

にやりと笑うエイセキが、腰から下げたシミターの柄を握る。

「ディストに従うか否か、だろ」

ヴァルは俯き、洋刀の持ち手に力を込めた。

今度はエイセキの方が驚き、目を丸くした。

「多くの人々を殺め、尚も破壊を繰り返す…お前らを許すわけにはいかない!」

顔を上げ、ヴァルは一気に間合いを詰め、エイセキに斬りかかる。


双方の刀身が合わさり、『キィン』と音を鳴らした―――


「…お前、ディノナバでアルジェに出くわした一味か??」

刃を交えたまま、エイセキが問う。

ヴァルは答えず、一度エイセキ側へ刀身を押しつけてから距離をとった。

「まあ、どっちでも構わねぇが…一つ、教えておいてやるよ」

エイセキが、左手の人差し指を立てて見せた。

「『大義のためには犠牲もやむなし』…てな」

「っ!!」

エイセキの発言で、より一層ヴァルの闘気と殺気は高まった。

「そう怒るなよ。俺は、『無駄死に』って言ってるわけじゃないぜ。『尊い犠牲』だと思ってるさ」

飄々とした態度で、エイセキが語る。

ヴァルは重心を低く、洋刀を再び敵へと向けた―――



同時刻…


「あーあっ!こりゃひどいなぁ…」

公園へ到着したトゥルースは、土台ごと倒れた銅像を憐れんでいる。

―――町の外壁が突き破られ、そこから延長線上の地面は数十メートルに渡ってえぐれていた。

「何がしたいのか、ぜんっぜん理解できないなー」

トゥルースが独り言を言い、顎に手を当てる。

しかし辺りに人の姿はなく、声だけが空しく鮮明に響いた。

「だから教えほしいんだよねぇ…隠れてないでさ」

腰に付けたケースから、素早く一振りのブーメランを取り出す。

しんと静まり返った雪景色の中、針葉樹の脇で朧げに小さな影が動いた。

その刹那、鎖に繋がった分銅がトゥルースの手元を目掛けて飛んでくる―――

「っ!」

トゥルースは後ろへ跳ね退き、難無く攻撃をかわす。

空を切った分銅が、軽やかに引き戻される。


「強いヒト、見つけました」


分銅を垂らした鎖と鎌を掴み、幼い金髪の少年が現れた―――

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ