第46話
「オレの家…ルドルファン家は、代々この町の治める一門として続いてきた」
ガイは椅子へ腰掛け、落ち着いた調子で話し始めた。
「親父は歴代の町長の中でも、特に優秀らしくてな。住民からの人望も厚い。そのせいか、型にはまったような人間で…物心ついた頃から、身なり、礼儀、言葉遣い、交友関係まで…すべてに関して口出ししてきやがった」
ため息まじりで語る面持ちが、辛そうに曇る。
「厳格な父親…か」
落ち着いた口調のヴァルは、背中を壁へ預けていた。
「オレは、そんな親父が嫌いだった…だから家出して旅を始めた」
膝の上に置かれるガイの拳へ、力が込められていく。
「オレは一族の恥…とんでもねぇ出来損ないってわけだ」
自嘲気味に、ガイが吐き捨てた。
「俺…ガイはすごいと思うよっ」
ロイスは、朗らかに笑んでいる。
「自分から家を出て、一人で生きていこうって決意したわけでしょ??それって、すごい勇気いることじゃんっ」
明るい声が、重たい雰囲気を一掃した。
「ロイス…」
微笑みながら、サラはロイスを見遣る。
「…ありがとな」
ガイが照れくさそうに俯き、礼を述べた。
「おめぇ見てっと思い出すぜ。いつもオレを庇ってくれた…」
コンコン――
懐かしむガイの言葉に被さり、ノック音は鳴る。
「誰でしょう…」
首をひねり、ナヒロが部屋の扉へ向いた。
「ボクが出るよ」
トゥルースは挙手をしてから、立ち上がる。
「はいはーい!どちら様ー??」
歩み寄りつつ、ドア越しに話し掛ける。
「すみません…こちらに、ガイさんとおっしゃる方はいらっしゃいませんか??」
控えめながら、訪問者が尋ねた。
「いるけど…キミは??」
扉を開放したトゥルースは、目の前にいる貴族風の少年へ首を傾げる。
「僕は、その…」
「誰が来たって??」
少年が恐る恐る名乗ろうすると、トゥルースの後方からガイは様子を窺いにきた。
「おめぇ…!ゼオじゃねぇかっ」
驚きに目を見開き、ガイが少年へ投げかける。
「…兄さん?!兄さんっ」
「『兄さん』??」
ゼオと呼ばれる少年の言葉で、トゥルースは反応を示した。
「まさか…」
遅れてやってきたロイスが、ゼオをじっと眺めている。
「コイツはオレの…弟だ」
「お、おとぉとー?!」
ガイの告白に、ロイスの声は一段と大きくなった。
「似てないねー全然っ」
「うっせぇ!」
飄々と悪たれるトゥルースを、ガイが小突く。
「でかくなったな…元気だったか??」
「うん…」
ガイに頭を撫でられ、ゼオは涙目になっていった。
「…おい。部屋を出るぞ」
ヴァルが、ロイスとトゥルースに移動を促す。
「好きに使ってください」
そう言って、ナヒロは再会した兄弟へ入室を勧めた。
諸事情により、更新が大幅に遅れましたことをお詫び申し上げますm(__)m 以後もマイペースな更新になるとは思いますが、ご愛読いただけると光栄です。