第45話
「『オヤジ』って…」
ロイスは、ガイとドニの顔を見比べる。
しかしそれ以上、ガイが口を開くことはなかった。
「…生きていたとはな」
人が変わったように、ドニは冷ややかな態度を示す。
「町長…っ」
アストンが、悲痛の面持ちでドニの背を見つめた。
傍らのナヒロは、じっと状況を観察している。
「…行くぞ、アストン」
沈黙を破り、ドニがガイから視線を退けて歩き始めた。
「は、はい…っ」
アストンは一同に向かって辞儀をすると、慌ててドニを追いかける。
「ガイ…」
言葉を失った仲間を、ロイスが見遣る。
ガイは俯きがちに顔を歪め、奥歯を噛み締めた。
「ってことは…ガイ、町長の息子なの?!」
宿へと戻てきたロイスたちの話を聞いて、トゥルースが身を乗り出す。
「ええ。はっきりとはおっしゃってませんでしたが、様子を見るかぎり…」
こくりと頷きつつ、サラは答えた。
「間違いないと思う。ドニさんの付き人みたいなヒトも、ガイのこと知ってたみたいだったし」
ロイスが、詳細を付け加える。
「こんな広い町で出くわすとは…運がなかったな」
平静を保ったままのヴァルは、ため息をついた。
「ヴァルは…知ってましたでしょう??」
確信的な口ぶりで、ナヒロが問う。
ぴくりと、一瞬だけヴァルの眉は動いた。
「ガイが雪国に詳しいこと、ヴァルなら一番に気付いたはずですわ。しかし追及するどころか、フォローをしていましたわ。それはつまり、事実を知り隠そうとした…ということですわね??」
ナヒロが、淀みなく論じてみせる。
答えを求めるように、ロイス・サラ・トゥルースの三人はヴァルへ視線を移した。
「ああ。俺は…知っていた」
ようやく、ヴァルが重く言葉を発する。
「…ガイさん、私たちには言いたくなかったのでしょうか」
眉を垂れるサラは、寂しげに呟いた。
その時、勢いづいて部屋の扉が開く―――
「ガイっ」
ロイスは身体を跳ねるほど、驚いていた。
扉を開けたガイが、颯爽と室内へやってくる。
その表情は険しく、一同は思わず息を詰めた。
「バレちまったもんはしょーがねぇし、やっぱ隠すのも性分じゃねぇ…だから、おめぇらに全部話すっ」
生き生きとした顔に変わり、ガイが宣言する。
そして自らの拳で胸を打ち、決意を表した。