第40話
その夜―――
夕食を終えたロイスたち一行は、ヴァルとガイの使用する部屋へ集合していた。
「いっぱいご馳走になっちゃったね」
ロイスが満面の笑みで、自身の腹部をさする。
「あんなに喜ばれるとはねーっ」
上機嫌なトゥルースが、ベージュ色の絨毯の上で寝転ぶ。
「かねてから、あのマリンサーペントには悩まされてきたそうだ。ブルーオアで直航船がなかったのも、そのせいらしい」
テーブルで地図に目を落としたまま、ヴァルは話した。
「それにしても、でけぇヤツだったなぁ」
ベッドを背もたれにして床へ座るガイが、思い出したように片眉を上げる。
「世界中で広がっている、動物の突然変異ですわ」
ナヒロは木製の椅子に座して、憂えて言った。
「早く原因を突き止めないと。大変なことになるね」
真剣な口調のトゥルースが、告げる。
事態を想像したのか、ガイの顔は引きつった。
「皆さんなら、きっとできます」
ロイスの隣で、サラは切り出す。
予想外の展開に、一同の注目がサラへ集まった。
「何もできない私が言うのは変ですが…皆さんならきっと、何かを成し遂げられるような気がするんです」
サラは控えめになりながらも、一同に思いを伝える。
するとロイスが、サラの手へ自分の手を重ねた。
「今、俺たちにわかってることは少ないから…不安になるかもしれない」
ロイスの瞳は、一同を順繰り映し出す。
「俺は信じる。みんなのことを、みんなと一緒に歩いてく道を。だから、焦らないで行こう」
サラの手をしっかりと握り、ロイスが一同へ微笑みかけた。
「…一つ一つ、目の前のものに立ち向かっていけばいい。俺らは、俺らのやり方で」
ヴァルは視線を上げ、ロイスに頷く。
その頃、とある場所では―――
「いいわねぇ。青春だわぁ」
闇に一際輝く鏡の中にはロイスたち一行の姿があり、それに向かって女の声は賞賛の意を表した。
「…師匠、またのぞき見ですか??」
女を師と呼んだのは、うんざりとした様子の少年の声である。
「シオン。アナタは見えないからわからないだろうけどっ、コレは重要なことなのよー??」
女は陽気ながら、少年――シオンへ諭した。
「大事だと思われたいなら、普段の行動を慎んでください」
師匠の弁論を、シオンが簡単にあしらう。
「可愛くないわねーっ」
女師匠は、シオンに非難を浴びせた。
それから、再度鏡へ向くと、石竹色のルージュで艶めく唇が薄く笑った―――