表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/59

第38話

ロイスは二度ほど屈伸をして、ブーツのつま先を床板に当てる。

「思いっきり投げちゃっていいからねっ」

明るく告げると、首を鳴らしていたガイが渋面をつくっていた。

「おめぇ、あーゆーの嫌いなんじゃねぇのかよ」

そして、マリンサーペントに顎をしゃくる。

「誰かがやらなくちゃいけないなら、俺がやるよっ」

得意げに言ったロイスに、恐れる様子は微塵もない。

「…さてと、まずはボクがっ」

トゥルースは結界の際に立ち、両掌を海へかざした。

「形なき水、果てなき水よ…我仇なす敵の、戒めとなれっ」

集中したさまで、語句を紡ぐ。

海水が無数の柱状に浮き上がり、それは蜘蛛の巣のごとくマリンサーペントの全身に巻き付いた。動きを封じられ、マリンサーペントは鈍く唸る。

「行くよ、ガイっ」

「おうっ」

ガイへ合図すると、ロイスが助走距離を駆け出した。

「うおおおーっ!!」

ガイは雄叫びを発し、走り込んできたロイスの左足を受け、天高く投げつける。

結界から突き抜け、ロイスの身体が一気にマリンサーペントの頭上へ跳躍した。

「はああーっ!!」

落下と共に、ロイスは剣の切っ先を振り下ろす―――


ザシュ―――


次の瞬間、マリンサーペントの前頭部に剣が突き刺さった。

「ギギィーッ!!」

マリンサーペントは金切り声で鳴き、身をよじろうとしている。

しかし水の捕縛によって、頭部に乗るロイスを振り落とすことすらできない。


「致命傷には…ならんようだな」

敵の状態を見つめ、ヴァルは分析した。

「他に、手はねぇのかよっ」

興奮気味のガイが、ヴァルとトゥルースに交互で詰め寄る。

「今考えてるけどっ…正直、ボクはヤツの動きを抑えるので精一杯だし」

トゥルースは、こめかみから一筋の汗を流した。


「どーしよーっ」

マリンサーペントに乗りつけたまま、ロイスが困惑している。

「たまたま落雷がー…とか、ありえないよね」

晴れ渡る空に向かって、途方もない願いを言った――すると…


たちまちロイスの頭上へ、黒い雲が集まり始める。

「へっ??」

空模様の急激な変化に、ロイスは間抜けた声を上げた。

雷鳴が響き、積乱雲から放電の帯が走る。

―――途端、一本の稲光がロイスの剣に降り注いだ。

ロイスはまばゆい閃光にのまれながら、受け取られた雷電流がマリンサーペントに漏電するのを目撃した。

そして自らが、雷と一体となるような感覚に迷う。


『これも…俺の力…??』


漠然とそう考えながら、浮遊感に身を委ね、ロイスは意識を放した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ