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第35話

一方、客室では―――


木製の円形テーブルを囲み、サラ・トゥルース・ナヒロが椅子へ着席していた。

「サラ…トゥルース…ロイス」

ナヒロは確かめるように、三人の名を呼ぶ。

「うん、いい感じっ」

淡い緑のカバー付きベットに座るロイスが、指で輪をつくった。

「緊張しますわ」

ナヒロは、喉元に袖口をかざして深呼吸する。

「普段呼び捨てとかしないんだ??」

首をかしげ、トゥルースが尋ねる。

「ええ。周囲が、大人ばかりでしたから」

落ち着きを取り戻したように、ナヒロは説明した。

「俺なんか、歳とか関係なく呼び捨てだけどなぁ。ヴァルにもガイにも、普通にタメ口だしっ」

「ボクもーっ」

陽気なロイスとトゥルースが、笑っている。

「遠慮なさらないでくださいね」

つられて微笑み、サラはナヒロへ言葉をかけた。

「ありがとう」

ナヒロが、わずかに頬を朱に染める。

「さーてとっ…俺、ヴァルとガイ探してくんねっ」

両膝を軽く叩き、ロイスは勢いをつけて立ち上がった。

そして、部屋のドアを開けて廊下へ出て行く。

「危険な目に遭うこともあるけど…平気なの??」

ロイスの姿を見送ったトゥルースが、不意に切り出した。

刹那、室内は静まり返る―――

「…もとより覚悟がなければ、同行しておりませんわ」

ナヒロが、強く険しい眼差しで答えた。



「あ、ヴァルっ」

屋外へ上がる階段の途中、ロイスは尋ね人の片方と出くわす。

「どうした」

ヴァルが、段を降りながら問いかけた。

「探しに来たっ。ガイは??」

「おう、ロイスっ」

ロイスの質問を遮るように、ガイの明るい声は響く。

「なんだぁ。一緒だったんだっ」

晴れやかな笑みで、ロイスはガイを見上げた。

「ちげぇよっ。たまたま、そこで会っただけだっ」

照れくさそうなガイが、慌てて否定する。

その瞬間―――


『ズシーンッ』


と、鈍い音と共に大きな横揺れが起こった。

「わあっ!!」

ロイスたち三人は、反射的に手摺りを掴み身体を支える。

「なっなんだっ?!」

振動に耐えるガイが、声を荒げた。

「何かと衝突した…といったところか」

膝を折った姿勢で、ヴァルは冷静に分析する。

「俺、部屋見てくるっ」

ロイスが、揺れの弱まりで階段を降り始めた。

すると再び、船は衝撃に襲われる。

「うわぁっ!!」

段差から足を踏み外し、ロイスがよろめいた。

ガイはとっさに、ロイスの衣服を引く。

「バカ!!あぶねぇだろっ」

「ご、ごめんっ」

バランスを保ち直すと、ロイスがしゃがみ込んだ。

「もう少し、じっとしてろ…部屋の方は、トゥルースがいれば心配いらん」

客室の扉が並ぶ廊下へ、ヴァルは一度だけ目線を流す。


「…だ、誰かぁー!!」

屋外から、男の叫び声がロイスたちの耳へと届いた―――

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