表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/59

第34話

「なんで、今まで黙ってたの??」

トゥルースは、疑問を口にする。

「それは…」

気まずそうに、ナヒロの目線が下へ外された。

その時、船は出航の汽笛を鳴らす―――


「い、いいんじゃねぇかっ。何だってっ」

落ち着きないそぶりのガイが、フォローした。

一瞬にして、一同の注目はガイへ向かう。

「…うん。一緒に来てくれるんだったら、嬉しいしっ」

賛同し、ロイスが清々しく笑った。

「俺は構わん」

ヴァルは、端的に意見する。

「…まー、いっか。ボクも、人のこと言える立場じゃないしっ」

納得したように、トゥルースがにかっと歯を見せた。

「よろしくお願いします、ナヒロさん」

サラの声は、喜びで弾んでいる。

一行の歓迎を汲み取り、ナヒロが深く辞儀をした。



蒼い大海を、滑るように船が進む。

積み荷の樽の上へ胡座をかき、ガイは空に浮かぶ雲を眺めていた。

「ばーさん、やっぱ気付いてたんかぁ」

独り言を呟き、手で荒々しく髪を乱す。

「…何をだ」

「うおっ」

唐突に声を投げられ、思わず身体がびくついた。

ヴァルは気にもかけず、歩み寄ってくる。

「びっくりさせんじゃねぇよっ」

「仮にも武道に通ずる者なら、気配くらい読め」

ガイの文句を、ヴァルが軽くいなした。

「うるせぇよっ」

むっとしたガイは、眼を泳がせる。

「…ナヒロと話さないのか??」

ヴァルから問いに、ガイの頬がたちまちに紅潮していった。

「今、ロイスたちと部屋にいる」

ヴァルは、背丈ほどの高さがあるコンテナに身体を預ける。

「おめぇ、いつから気付いてた??」

悔しげに、ガイが下唇を噛んだ。

「初めてナヒロと会った時からだ。相当惚けた顔だったな、お前」

腕組みをするヴァルは、さらりと言う。

「バカみてぇだってか??出会った瞬間、気に入っちまうなんてよっ」

ガイが、興奮気味で吐き捨てた。

静まる空気を、潮騒は包み込む―――

「まあな…が、悪いとは思わん」

ふっと息をつき、ヴァルがかすかに笑んだ。

ガイは予想を裏切られ、瞬きを増す。

「おめぇ、オレの気持ちがわかるってか??」

そして、ヴァルの心情をさぐった。

「まあ…な」

するとヴァルが、天を仰いで遠く見遣る。

それきり、二の句を継ごうとはしない―――

「…オレはよぉ、ロイスみてぇにはなれねぇよ。あんな素直にはな」

胡座をやめ、ガイは樽から降りた。

「でもよ、自分の気持ちをごまかしたくねぇ。嘘はつきたくねぇんだ…まあ、あの子がついて来るってわかるまでは、忘れようとしたけどよぉ」

言葉の後半部をやや濁しつつ、思いを述べる。

ヴァルが、再び息をもらした。

「ロイスと比べるな。アレは特殊だ」

それから、屋内の方へと戻り始める。

「さっさと中へ入れ。知恵熱でも出されたら迷惑だ」

そう言い残し、ヴァルは足早に去って行った。

「へっ、うるせぇっ」

負けじと悪態をつくガイの口元が、微量ながら笑っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ