第28話
「ディスト様は、私にお力添えをしてくださいました。その代わりに…君達を抹殺するよう命じられたのです」
振り返ったジャックは、無表情であった。
ロイス・ヴァル・ガイが、身構える。
「ロイス君を捕らえ、他の方々を押さえ込もうと思いましたが…サーシャが足止めにならないとは、計算外でした」
ジャックは、淡泊なさまで言い放った。
息をのみ、ロイスが剣の柄に触れる。
「アンタ自身、力を持ってないから…でしょ??」
ロイスたちの後方から、声が割って入った―――トゥルースは、もがくサーシャの両腕を封じながら歩み寄る。
「アンタは魔力を持ってないけど、この子にはある…でも、ボクたち全員には太刀打ちできない。だからまず、ロイス一人に狙いを定めた」
サーシャを完全に後ろ手で拘束し、トゥルースが述べた。
「…その子がサラに似てて、ロイスの気を引けるからかっ」
ガイは、眉をひそめている。
「いや…サラに似てることも、この子の存在さえも、全部仕組まれたことだったんだ」
ジャックへ顎をしゃくっり、トゥルースが答えた。
「研究の成功とは…このことか」
思い立ったように、ヴァルは呟く。
サラも何か気付き、サーシャを見つめた。
「どうゆうこと??」
「わかるように説明しやがれっ」
ロイスとガイが、詳細を問う。
「この子は…人間じゃない。人間そっくりの、ロボットなんだ」
トゥルースは、ゆっくりと打ち明けた。
驚きを隠せず、ロイスとガイがサーシャに注目する。
「…そうです。サーシャはディスト様のお力によって完成した、心を持つ機械です」
高らかに宣告したジャックは、両腕を大きく広げた。
「魔力とは、実に素晴らしい。人の手では為しえなかったことを、簡単に実現してしまうのです!!」
ジャックの眼差しが、何にでもない一点に向く。
一行は、静まり返った―――
すると、ヴァルがジャックへ近づいていく。
その眼光は鋭く、手には洋刀を携えている。
「やめて!!」
そこへトゥルースを振り切って、サーシャが駆け込んだ。
「お父様を傷付けないでっ…お願いっ」
ヴァルの両腕を掴み、懇願する。
「ロイスを陥れ、怪我を負わせた。実行したのはアンタでも、原因を作ったのはコイツだ」
サーシャの背にいるジャックを、ヴァルは冷たい視線でさす。
「だったら、代わり私をっ」
「余計なことをするな!!お前に庇われる筋合いはない!!」
ジャックは、怒号を飛ばす。
しかし、サーシャが首を振った。
「私は、傷付いても修理ができます。でも、お父様は違う」
引き下がらず、サーシャは反論する。
反射的に、ジャックが口をつぐんだ。
「ありがと…」
ロイスは、ヴァルの肩にそっと触れた。
「ジャックさん。この子はロボットでも…ジャックさんを守ろうとする気持ちは作り物じゃないって、俺は思います」
―――ジャックへと、感じたままを伝える。
サーシャがヴァルを離し、俯いた。
やがて、茫然としたジャックは地面に膝をつく。
「みんな、帰ろっ」
ロイスが、仲間たちへ明るく弾む声をかけた―――