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第27話

「そいつを、離してもらおうか」

ヴァルが一歩近づき、ジャックを睨みつける。

「…くっ!!」

唐突にジャックは、ロイスを突き飛ばし、隣のフロアへ走った。

「おい!!大丈夫かっ?!」

よろけたロイスの身体を、ガイが受け止める。

「う、うん。ありがと」

支えてくれているガイへ礼を言い、ロイスは徐々に自力で立ち上がった。

「…ロイスっ」

こらえていたものが溢れるように、サラがロイスの胸へ飛び込む。

「サラ??」

まごつきながら、ロイスはサラの表情を窺った。

顔こそ見えないが、わずかに鳴咽が聞こえる。

「心配かけてごめん…」

ロイスはサラを腕の中へ抱きしめ、瞳を閉じた―――


「…あー、取り込み中に悪いんだけどよぉ」

バツの悪そうな調子で、ガイが訴える。

瞬時に、ロイスとサラは距離をとった。

「お、追いかけないとねっ」

焦るロイスが指で頬をかき、ジャックの消えた方を見る。

すると、ヴァルはロイスの頭上に左手をかざした。

「あ…」

動作を止めるロイスに淡黄色の光がきらめき落ち、傷を癒していく。

「…ありがと、ヴァル」

ロイスは目を細めて頷くと、鞘に収まった剣をヴァルから投げ渡された。

「奴に聞かねばならんことがある…追うぞ」

ヴァルが、背を向けて歩を進める。

間をおかず、ロイスとサラは後に続いた。

「ホント…素直なんだか、そうじゃないんだか」

片眉をつり上げたガイが、ヴァルの背中へ視線を送る。



身の丈ほどの窓が点在する、無機質な薄灰色の廊下にて―――

トゥルースは、短剣を手にするサーシャと対峙していた。

「キミ、一体何者なんだ??サラに似てるのだって、偶然じゃないんだろ??」

間合いをはかり、トゥルースが問う。

「…ええ、そうよ。私は、ロイスのために作られたの」

サーシャは、抑揚のない口調で告げた。

「『作られた』??どうゆう意味??」

首をかしげたトゥルースが、答えを待つ。

一筋の髪を指に巻き付け、サーシャは笑んだ。

「私はお父様に作られた存在…勘のいい貴方なら、わかるんじゃない??」

サーシャの言葉に、トゥルースが若干顔をそむけた。

はっとして、すぐさま向き直った。

「まさか、キミ…!!」



ロイスたち四人はジャックを追い、研究所と併設する広場へと抜けていた。

草木も生えず、硬い土の地面が剥き出しである。

「どうして、俺たちを狙った??」

ロイスはジャックの後ろ姿を見据え、声をかけた。

しばし、沈黙が流れる―――

不意に、ジャックは肩を揺らし始めた。

「…私の研究を成功させるための、交換条件です」

一行の耳へ届く程度まで声量を絞り、言う。

「当初、私の研究は順調でした…しかし成功が間近に思われた矢先、問題が生じました」

ジャックが、うわ言のように語った。

「それは、私の力ではどうにもならない現実でした。絶望の淵に、立たされました…そんな折、あの方が現れたのです」

空を見上げ、ジャックはそのまま黙りこくる。

「あの方って誰だよっ」

しびれを切らしたガイが、興奮気味に尋ねた。


「ディスト様です」


ジャックから紡がれた名に、ロイスたちは驚くしかなかった―――

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