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第23話

一人掛け用のソファーとベッド一つの小綺麗な部屋で、サラは窓辺に立っていた。

顔つきに感情の色はなく、視点がちらつくこともない。

窓の外には白壁の町、きらめく蒼い海が広がる―――


「サラー。ボクだけど、入っていいかな??」

扉を打つ乾いた音が聞こえ、問われた。はっとしたサラは、慌てて戸口へ駆けつける。

「すみません。今開けますっ」

施錠を解き、ノブを回しながら引いた。

そこには、トゥルースが片手を上げている。

「ありがと。失礼するねっ」

明るく言うと、トゥルースは入室した。

サラが、丁寧なさまで扉を閉める。

「…気分はどう??」

窓枠に尻から飛び乗ったトゥルースは、両足を揺らした。

「ご心配かけてすみません…もう、大丈夫です」

ふわりと、サラがベッドに腰掛ける。

その表情は、曇りつつあった。

「何を…考えてたの??」

ばたつかせていた足を止め、トゥルースが質問をする。

サラの身体は、かすかながら震えた。

「なぜ、ロイスを責めてしまったのかと…」

眉を垂れると、サラが俯く。

「ロイスはいつも、私のためを思ってくれて…今回もきっと、私が記憶を取り戻せるようにって…」

次第に、サラは声量を失っていった。

「なのに…私…っ」

絞り出すように言ったのち、サラが鳴咽をもらす。

トゥルースは床に降りると、サラの足元へ膝をついた。

「…大丈夫。ロイスは、キミに落胆したりしない。何がキミを傷付けたのか、きっと考えてる」

そっと、サラの手をとる。

「キミは、感じたことを言ってよかったんだと思うよ。言葉にしなきゃ、伝わらないこともあるんだから」

指に力をこめ、トゥルースが説いた。

サラの頬には、涙の筋ができている。


『コンコン』と、扉が鳴った―――


「わりぃ、開けてくれ」

ドアごしに、男の声は要望する。

「はいはーいっ」

すぐさまトゥルースが返事をして立ち、扉へと向かった。

潤んだ瞳をこすり、サラも立ち上がる。

「どーしたのー??」

扉を引き、トゥルースが尋ねた。

「ロイスが、まだ帰ってこねぇんだよ」

短髪を掻き回すガイは、苦い顔である。

廊下の小さな円形の窓から、橙の光がこぼれていた。

「俺らで捜しに行ってくる。念のため、隣の部屋で待機してくれないか」

冷静なヴァルは、トゥルースにキーホルダー付きの鍵を差し出す。

「入れ違いになったら困るしね。わかったっ」

トゥルースが、鍵を受け取った。

おずおずと、サラは三人のやりとりを窺う。

「おう。少しは元気になったかっ」

ガイが、トゥルースの脇からサラを覗いた。

「あ、はいっ…ありがとうございます」

驚いたサラは、畏まって頭を下げる。

「…行くぞ」

ぶっきらぼうに言い放ち、ヴァルが方向を変えて歩み始めた。

「ホントはすげぇ心配してたんだぜ、アイツ。素直じゃねぇよなっ」

ガイは、内緒話のような動作をする。

片手で口を隠し、トゥルースが吹き出すのをこらえた。

「…何をしてる!!」

「んじゃ、行ってくるわ」

急かすヴァルを、ガイは小走りで追いかけてゆく。

廊下へと出たサラが二人の後ろ姿を確かめ、微笑を浮かべた―――


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