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第21話

「297、298…」

ロイスは、階段を上りながら数えている―――その両腕では、サラを抱き上げて。

「299…300!!」

両足で跳びはね、ロイスが最上部に到達する。

サラは、緊張しきって固まっていた。

「…ありがとう、ロイス」

消え入りそうなほどの小声で、顔を赤らめたサラが礼を言う。

するとロイスの瞳は、きわめて間近でサラの表情をとらえた。

「ああ、ごめんっ。降ろすねっ」

動じる気配もなく、ロイスがサラの足を静かに地面へとつけた。

「まじで、しんどい…」

そこへ、ガイがようやく姿を見せる。ひどく荒い呼吸をし、額には汗が滲んでいた。

「『マイヤード研究所』…って何コレ??」

ロイスは長方形の表札を読み、眉間に皺をよせる。

目の前にそびえる屋敷は白塗りではあるが、町の他の建物とは比べものにならないほど大きい―――

「とりあえず、入ってみようかっ」

「おいっ」

高らかに宣言したロイスに、ガイが制止を促した。しかし、ロイスはすでに扉へと向かっている。

「こんにちはー」

声をかけながら、ロイスが戸口をノックした。

やがて、両開きドアの片側だけが開く―――

「どちら様でしょうか…」

控えめに顔を出した者に、ロイスは思わず息をのむ。

金髪に白い肌、青い目の――サラによく似た少女だったからだ。

「おいおい、嘘だろ…」

後からやってきたガイも、驚きのあまり立ちつくした。

サラは無言のまま、身体を強張らせている。

「誰か来たのか、サーシャ」

室内から、男性の呼びかけが聞こえた。

「お父様、この方々が…」

返答した少女――サーシャは振り向くと、金糸の口髭をはやす男性を見つめた。

くたびれた白衣を羽織っている、中肉中背の男性である。

「客人など何ヶ月ぶりでしょうか…どうぞ、お入りください」

そう言って、男性は扉を両側とも開け放つ。

一方ロイスは、サーシャをじっと観察していた。

「…あっ、おい!!」

唐突に、ガイは大声を上げる。

ロイスが視線を投げると、階段を下り始めるサラの背中を発見した。

「すいません、また来ますっ」

詫びの言葉を残し、ロイスは階段へと走り出す。

間を空けることなく、ガイがロイスを追った。



「待って!!サラっ」

滑るように階段を駆け降り、ロイスはサラの手首を握る。

そうしてサラが、やっと歩みを止めた。

「どうしたの、急に」

ロイスは、震えるサラの肩に語りかける。

わずかに離れ、腕を組んだガイが二人を見守っていた。

「…ロイスは、あの人が私と関係あると思うの??」

サラは、切なげに問う。

押し黙ったロイスが、サラの手首を解放した。

「顔が似てるだけで、ロイスにとっての私は、あの人と重なってしまうものなの…??」

サラの声色は揺れ、悲愴を漂わせる。

潮風に乗った雲が太陽を阻み、辺りは陰に包まれた。

「あの人が私なら、ここにいる私は何…??」

大粒の涙をこぼし、サラがロイスに訴える。

その響きに痛みを感じたロイスは、何も答えられなくなっていた。

「…とりあえず、アイツらと合流しようぜ」

ガイが落ち着いた様子で言い、二人の背に優しく触れた―――

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