第20話
港町・ブルーオア―――
出入りの門から海までは緩やかに下り、その斜面に沿って家々が並ぶ。建物や道は全て白で統一され、海の青とひきたて合っていた。
魚や果物などを売る店が、居住区に隣接して軒を連ね、いたる所で人だかりをつくっている。
「人、多過ぎだろ…」
市場の感想を述べると、ガイは猫背になった。
「ディノナバで生活できる奴が、妙なことを言う」
船着き場への経路を確認していたヴァルが、ガイを一瞥する。
「賑やかでいいじゃん。ボク好きだけどなっ」
トゥルースは、ヴァルの後ろで晴れやかに言った。
「あ、俺イカ焼き食いたいっ」
声を上げたロイスが、屋台をめがけて駆け出そうとする―――が、襟首を持たれたことによって、勢いよく引き戻された。
「船の運航状況を知るのが先だ」
ヴァルはロイスを掴んだまま、船着き場へと進行する。
そして、『チケット販売所』と書かれた小さな建物に向かう。
「エオス大陸へ渡航したいのだが」
ヴァルが、カウンター内の中年女性に話しかけた。
女性は、品よく会釈する。
「いらっしゃいませ。只今エオス大陸への直行船は、運休致しております。申し訳ございません」
再び一礼し、女性が姿勢を正した。
「まじかよ。なんでだ??」
「船が魔物に襲われるという事件が多発しておりまして…」
詰め寄るガイに、女性は曇った表情で答える。
トゥルースが、カウンターの脇にある海図を指でなぞった。
「この、ルシア島経由ってのは使えないの??」
一本の航路線に触れ、トゥルースは女性へ問う。
「はい。そちらでしたら…二日後に一便だけ運航予定です」
手元の書類に視線を落としつつ、女性が告げた。
「遠回りにはなるが、仕方ないな」
ヴァルは嘆息をもらすと、腰元の紺色の巾着に手を伸ばした。
「うまかったぁ」
歌うような調子のロイスが、麻袋を振っている。
―――海沿いに続く市場を、ロイス・サラ・ガイの三人は歩いていた。
「おい、やめろって」
ガイはロイスに追いつくと、揺られる荷物を押さえた。
「なんで??うまくなかった??イカ焼き」
きょとん、としたロイスがガイの顔を見上げる。
「そりゃあ、うまかったよ…」
ガイは、あからさまに肩を落とした。
それを見たサラが、くすくすと笑う。
「ヴァルとトゥルースも来られればよかったのにー」
ロイスは首を回し、ちらりと後方を振り返った。
「宿の手配、お任せしてしまって本当によかったんでしょうか」
不安げな表情で、サラがガイに尋ねる。
「いいって、いいって。アイツらが、自分からやるって言い出したんだからよぉ」
眉をつり上げたガイは、ひらひらと片手を動かした。
それに対し、サラが口を開きかけた時―――
「ねぇ!!あっちの階段上ってみよーよっ」
いつの間にか、ロイスは二人の前を行っていた。
サラとガイが、眼を合わせる。
「なっ??アイツのお守りのが、大変だろ??」
歯を見せて笑ったガイは、サラの肩を軽く叩いた。