第13話
ヴァルと共に宿へ戻ったロイスは、サラにアルジェとの経緯についてを話した。
「その方はなぜ、ディストの味方を…」
サラは、無言のヴァルを気にかけている。
「どーゆーこと??」
首をかしげるロイスが、サラの答えを待った。
「夜を狙ったのは子どもがいないから、街の外壁を壊したのは一般人を巻き込みたくないから、だとすると…」
サラは、一息でまくし立てる。
「なるほどな…腕に覚えがある者なら、駆けつけると考えた」
納得した様子で、ヴァルが口を開いた。
ロイスは眉間にシワを寄せている。
「ええ。危険を察知すれば対処するために必ず現場にくると…」
口元に指先を当て、サラが先刻の状況を思い返した。
「だーかーらっ!!それと、ディストの仲間なのが変なのと、どう関係があんのっ」
痺れを切らし、ロイスは結論を求める。
ヴァルが、ため息をついた。
「つまり…力なき者を庇うような奴が、何故ディストを正義だと言うのかってことだ」
ロイスの頭を、ヴァルは小突く。
「…確かに」
間をおいて、ロイスがようやく理解した。
「違和感がありますね」
「ああ…今後に、注意するしかないな」
サラとヴァルは、険しい面持ちのままである。
「…ねぇ、俺そろそろ眠いんだけど」
ぽつりと、ロイスがぼやいた。
置き時計の針は、1時過ぎをさしていた。
「もう休むか…サラは、ここの部屋使ってくれ」
ヴァルが、部屋の出入りとは異なる扉を開ける。
そこはベッド一つの、小さな個室であった―――
「狭くて悪いな」
「いえ、ありがとうございます」
ヴァルの意図をくみとり、サラが微笑む。
「…それでは、おやすみなさい」
サラは挨拶したのち、個室へ入り扉を閉めた。
途端に、ロイスがベッドに寝転ぶ。
「…おい、ロイス」
ヴァルが、眼を擦っているロイスを呼んだ。
「おやすみぃ…」
やがてロイスは、すーっと安らかな寝息をたてる。
「…手のかかる奴だな」
ヴァルは、下敷きにされた布団を抜き取り、ロイスの肩までかけた―――
翌朝―――
一行が宿から出てると、青年が柱にもたれていた。
「よぉ!!おはようさんっ」
陽気な調子で、青年は一行の前に立つ。
「一晩よく考えたんだけどよぉ…どーせ狙われるなら、おめぇらといた方が危なくねぇだろって思ってな」
青年が、得意げに言い放った。
「それって…」
「おう!!オレも一緒に行ってやるぜっ」
まじまじと見つめているロイスに、青年は親指をつき出す。
「…やったぁ!!」
「オレの名前は、ガイ・ドルファってんだ。ガイでいいぜ」
ロイスは喜び、青年――ガイと握手を交わした。
「…サラと申します。よろしくお願いします」
「おー、よろしくなっ」
軽く頭を下げたサラに、ガイは弾む声をかける。
一方のヴァルは、素通りしていった。
「ちょっと、ヴァル!!」
ロイスの呼びかけに、ヴァルが立ち止まる。
「…勝手にしろと言ったはずだ」
振り向かないヴァルが、再び歩き始めた。
「うん!!ありがとっ」
ロイスはヴァルの背に礼を言い、にかっと笑みを浮かべた。