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プロローグ

はるか昔。

創世されたばかりの世界に生きた女性、エルス・クローゼ。彼女には、他の人々の持ち得なかった不思議な力があったという。

その力によって数々の奇跡を起こした彼女を、人々は王として敬愛した。


エルスは亡くなる前、世界の三つの大地を自分の子らに分け与えた。

長子のヘリオスは姓を継いでクローゼを名乗り、次子のエオスはシスイド、末娘のセレネはウィンスレットと新しい姓を受け、それぞれが大陸の守護する王となった。彼らもまた、母であるエルスの不思議な力を受け継いでいた。

肥沃な土地であるヘリオス大陸は、圧倒的な資源を保持した。統治するクローゼ王家も権威を増大させ、王城と城下町などを栄えさせた。

山脈が五割を占めるエオス大陸は、豪雪や高温などの厳しい気候の中で独自の文化を発展させた。しかしシスイド王家は、クローゼ王家と対立し、やがて姿を消していったという。

草原地帯が広がるセレネ大陸は、自然と人が共に生きる大地となった。田畑を耕し家畜を育てる民とウィンスレット王家は、慎ましく安定した生活を築き上げたのだった。


エルスは死後も多くの人々から愛され、世界を見守る神として君臨した。


王家の血を継ぐ者は、不思議な力『魔法』を遺伝していった。

親から子へ、薄れることはなく代々脈々と伝わり、世界中へ広がる。

魔法を使う者達は『魔族』とも呼ばれ、やがては王家に関わらず多くの者たちがその力を持つようになった。



エルスが神となり約三千年もの間、世界は平和を保ち続けてきた。




しかし、大事件が起こる。


世界最大権力を誇ったヘリオスの子孫、クローゼ王家が一夜にして滅ぼされてしまったのだった。



首謀者の名は、ディスト。



さらに野生の動物達が凶暴化、魔物と化したことより、世界は大混乱に陥った。




そこで女神・エルスは、世界の住人にディストを倒す宿命を授けた。



選ばれた七人の勇者達は、同じ日、同じ時刻、同じ夢を見ることとなる。













ーーー始まりの夢ーーー





かすかに霧がかかっている、小さな泉。


一人の少女が腰まで浸かっている。



透き通るような肌、水面と共にきらめく金髪。

スカイブルーの瞳を持ち、純白の滑らかなワンピースに身を包んでいる。



少女は微笑を浮かべ、雫とたわむれてから、岸に上がった。


小さな白い花に手を伸ばし、ゆっくりと撫でる。


わずかな風に花が歌うように揺れ、しばし穏やかな時が流れる。




少女の背後に黒い影が近づいてきた。


少女は気配に顔を上げて眉をひそめると、泉の中へ逃げた。


影は接近してくるが、唐突に消え去った。


水の中で後ずさっていた少女は足を止め、辺りを見回した。


すると、少女の目前に再び影がふいに現れる。

少女の身体は、カタカタと震え始めた。


影は変形して、身体を隠すほどの長い髪の人となる。

背中ごしに、剥き出しの四肢は蒼白く不穏な雰囲気を纏っていた。


鋭く長い漆黒の爪が少女へ向くと、黒煙が立ち込めた。

少女の身体は抵抗する間もなく、もやに覆われた。


次の瞬間、少女が後方へ倒れ込んだ。


気を失った少女の髪が、水面にゆらゆらと漂って浮かぶ。



その姿を見下ろし、真っ赤な薄い唇が笑った―――










暗闇の中、天窓から差し込む月光を浴びる者。



岩場で暖を取り、マントを身に纏う者。



ネオン街の路地裏で、しゃがみこんでいた者。



大木の太い枝に身体を預けた者。



聖人像に向き合い、祈る者。



木々が繁茂する隙間を眺める者。




同じ夜空を見る者達。




星空の果てには、微笑む女人の姿が映し出される。



一瞬にして消えた星の神秘と奇跡は、それぞれの眼に焼きついた。

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