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一枚の写真を見つけたのは、テスト勉強から逃げ出すために始めた部屋の掃除中のことだった。
杜撰な管理が仇となって、少しだけ日に焼けた写真。
中学時代の想い人が満面の笑顔を浮かべている写真。
修学旅行を利用し、一枚だけ確保できた小さい写真。
「懐かしいな」
当時よりも大分低音になった声が思わず漏れ出す。
当時よりも大きく硬くなった手が思わずこわばる。
「あれ、」
あれから、数年が過ぎた。
たった数年。
されど数年。
学生という身分から卒業しきっていない身としては、その数年は大きく見えてしまう。
「こんなんだったっけ」
時が経ち、風化する。
それは思いも同じだ。
恋の炎は鎮火して、想いは冷める。残った消し炭は……、どこに行ったんだっけ。
まあ良いや。
これで良いんだ。
百を手にしようとして、一を捨てた過去がある。
だから良いんだ。
一を手にしようとして、百を捨てたって良いさ。
「うし、勉強に戻るか」
インフレーション。
それは何事にも起きる。
僕は写真を元の場所に戻さず、握り締め、立ち上がった。