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変化 前編

ピピピピ、ピピピピ、と朝の澄んだ空気に機械音が鳴り響く。パシっという音と共に目覚ましは鳴り止んだ。


「ん、んーっ」


奏太は朝起きてベッドから降りると、伸びをする。パキパキという小気味良い音をたてながら体を伸ばすと、さっさと制服へと着替えた。奏太の部屋は1階の1号室にあり、そこから出ると目と鼻の先にはリビングがある。奏太の部屋の前の廊下、その奥には風呂や洗面所、トイレがある。奏太は顔を洗い、歯を磨くとリビングへと足を向けた。


「今日もいい匂いだな、っと」


ここの食事は当番制なのだが、部活や生徒会、バイトなどが無い雨野先輩がやってしまうことが多い。


「おはようございます」


俺はそう声をかけながらリビングへと入って行った。リビングとダイニング、キッチンは全て繋がっており、区別を言葉でするのは少し難しい。が、感覚的にここはリビングだ、などはまぁ高校生にもなれば大体は分かるので言葉にする必要性を感じたことは無いのだけれど。


「おはよう、奏太君。今日は早いのね」


いつもと変わらぬ笑顔で挨拶を返してくれる雨野先輩。ん?早いかな。目覚まし通りに起きたんだけど。


「あぁ、おはようございます。堀井君」


珍しく会長さんがまだ食事の席についていた。


「おはようございます、会長さん。今日は遅いんですか?始業式ですしもっと早く出る日かと思っていたのですが」


「いえ、時間はいつもと変わりはないですよ。堀井君が早いのではないでしょうか?」


そう言われて時計を見ると、確かに普段より1時間近く早い。


「あれ?もしかして目覚まし、1時間かけ間違えたんですかね」


「早起きは良いことですよ。継続出来ると大変よろしいかと思います。ええ、それはものすごく」


「な、なんか今日はぐいぐい早起き勧めて来ますね。何かありました?」


「い、いえ。ただ私が朝食を摂る時間は、大抵どなたも席についていらっしゃらないので…少し寂しくて」


「あぁ…確かに1人で食事するのは、少し味気ないかもしれないですね」


そう口にしたあと、自分の分の朝食が出来たと雨野先輩に呼ばれ、キッチンへと受け取りに行く。礼を言ってダイニングテーブルへと戻ると、会長さんはもうそろそろ食べ終わりそうだった。


「あ、すみません。結局一緒に摂れなそうですね、朝食」


「仕方ありませんよ。そうですね、明日からはもう少し早く起きてくださいね」


会長さんは、そうやってにっこりと微笑んだ。

俺は善処します、とそう答えて食事にとりかかった。

雨野先輩も自分の食事を運んでくると、はいと会長さんには弁当を渡し、俺と一緒に食べはじめた。会長さんはありがとうと答えて受け取ると、いってきますと告げて出かけて行った。

俺と雨野先輩が食事を摂りながらとりとめの無い話をしていると、田中さんが降りてきた。あ、この寮の女性は全て2階に住んでいる。そんなに大きい寮では無いので、2階はその5人で満室。1階は色々設備があるため、俺の隣に1つ空き部屋があるだけだ。


「おはようございます」


「おはよう、田中さん」

「おはよう静香ちゃん。お鍋にお味噌汁があるから温めて食べてね。おかずはおぼんにのってるからね」

「はい。いつもありがとうございます。ほ、堀井先輩は今日はお早いんですね…」


何故だろう、今日はみんなに言われる。


「あぁ、うん。なんか目覚まし1時間かけ間違えたのかな、って話をしてたんだ」

「そ、そうなんですか」


チラッと雨野先輩を見る田中さん。


「あら、何かしら?」

「い、いえ。別になにも」


女同士で何かあるのだろうか。そうこうしていると新川さんが降りてきた。


「おはようございます。…ん?堀井、今日は早いな」

「おはよう、新川さん。今日、みんなに同じこと言われたよ」

「おはよう、結衣ちゃん」

「おはようございます、新川先輩。なんでも目覚ましをかけ間違えたんじゃないかとお話しされてたそうですよ」


そう言って、また先輩を見る田中さん。話をしてたのは俺と会長さんなんだけど、何故見られるのは俺では無いのだろうか。いやまぁ後から来た田中さんは誰と話してたかなんて知らないから仕方ないとはいえ…そんなに苦手に思われてるんだろうか。

新川さんもチラリと雨野先輩を見て少し眉をしかめると、


「そうか。では私ももう少し早く起きるとするかな」


なんて言い出した。なにが私も、なんだろうか。この会話の中のどこに同意する部分があったのだろう…。

んんっ、と可愛らしい咳払いをしてから、そういえばと雨野先輩が切り出した。


「楓ちゃん、明日やることがあるから早く起きなきゃ、なんて昨日言ってたけれど…起こして上げた方が良いのかしら」

「あぁ、それなら私が行きましょう」


新川さんはそう言うと、部屋を出ていった。

食べ終わった俺はキッチンへ食器を運んで、オケに溜まった水につけると玄関へと向かった。会長さんが新聞受けから玄関へと置いていってくれた新聞を手に取ると、今度はリビングへと向かう。ソファに座って軽く新聞を流し読みしていると、スッとマグカップが差し出された。ふと見上げると田中さんがコーヒーを持って来てくれていた。ありがとう、と受け取ると田中さんは、ふふっと笑ってどういたしましてと答えてダイニングへと戻っていった。


コーヒーに口をつける。あ、これ多分ネジレ(しょうひんめい)のインスタントコーヒーだ。雨野先輩が入れてくれる時は必ずドリップだ。ってことは田中さんが入れてくれたのか、と少し感動していると新川さんが神無月を連れて戻ってきた。


「おふぁようございます…」


「おはよう、神無月」

「おはよう楓ちゃん」

「おはようございます、神無月先輩」


と三者三様の返答。何故かぽかんとしている神無月。そして数秒してから一気に顔を赤らめると、マシンガンのように言葉を紡ぎ出した。


「ななな、なんで堀井が居るのよって私まだパジャマじゃないやだもう最悪着替えてくる!」


言うだけ言って走り去っていった。なんなんだ一体。貴方が早起きだなんて槍でも降るんじゃ無いかと嫌味でも言われると思ったのに。

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