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裏プロローグ

「それで、まだ彼女は作れてないの?」


彼女は奏太君の部屋に入って行ってから直ぐにそんな話を切り出していた。


「いや、別に彼女欲しい訳じゃ無いから」


ウソ。この前リビングでドラマを観ながら「彼女欲しいかもなー」って言ってたじゃない。


「えぇ?こんな女だらけの寮に居てまだそんな事言ってるの?」


彼は私たちに恋愛対象として見られてない、って思っていたらしい。


「あんた、割と鈍いよね」


うん。私‘たち’はみんな揃って頷いた。

そう、盗み聞きである。みんな揃って何をやっているんだと思うかもしれないけどそれにはちゃんとした訳が…って盗み聞きは盗み聞き、理由があろうが無かろうが良く無いってことは分かってるんだけど。彼が女の子を連れて来るなんて珍しいから、つい、ね?


「そんな事言われても、好かれてる気が全くしないんだよ。神無月は会う度にバカとかアホとか暴言ばかりだし、俺のこと大嫌いだって公言してる。正直俺もそろそろ嫌いになって来たよ。…ん?」


楓ちゃんが両手両膝を地面に付けて絶望を体現していた。

神無月楓。奏太君のクラスメイトなんだけど、いつも憎まれ口を叩いてしまい、嫌われてしまっていることを感じ始めていたらしい。本人の口から聞いてしまった彼女は泣きそうな顔になっていた。なら暴言なんて言わなきゃいいのに。


「ん?物音?私には聞こえなかったけれど。それより他の人は?」


聞こえなかったらしい。助かった。


「あぁ、うん。そうだなぁ…田中さんはあんまり男自体苦手みたいで俺とは目すら合わせてくれないんだよね。あはは、笑えないけど」

「ふーん。男自体と言うより春樹が嫌われてるだけなんじゃない?」


静香ちゃんは泣きそうな顔で首を横にブンブンと振っていた。


「そう…なのかな?えーと、新川さんはちょっと潔癖な人だから恋愛関係の話をするだけで木刀持ち出して来そうで怖い…かな?正直まともに話をするだけでいっぱいいっぱいだよ。そんな状態じゃ恋愛に発展なんてするわけないでしょ」


結衣ちゃんは立ち上がると今にも部屋へと突入しようとした。私達はそれを慌てて抑え、叫ばないようにと口まで塞いだ。


「なるほどねぇ…。じゃあ先輩方はどうなの?」


「んー、会長さんはそれこそ生徒会長として規律正しく生活してるわけで。生活習慣があまりよろしくない俺とはあまり会う機会も無いし、何て言うか近寄りがたい感じかな。最早別の種族、みたいな。憧れはしてもそこから先へは無理だよ、無理。俺なんか告白するのも恐れ多いね」


そう、朝も夜もあまり奏太君と愛ちゃんが一緒に居ることはほとんど無い。

彼女は、近寄りがたい…とポツリとこぼしていた。


「あはは。それに何処かのお嬢様なんでしょ?確かに無理無理、つり合わないね。ってかなんでこんな寮に入ってるのかすら分からないし」

「あー、そういうの他の人に言われると大体イラつくけど、あの人に限って「つり合わない」って言われてもなんとも思わないな」


逆の意味で眼中に無い、ということなのだろうか。


「最後は雨野先輩か…。あの人は唯一俺に優しいし接点も多い人だけど…」

「だけど?」


だ、だけど?


「それは俺の方に向いてる優しさじゃないから」


どういうこと?


「ん?どういうこと?…あぁ、あの人はみんなに優しいからかぁ…。ファンも多いらしいよね。ってかその言い方、変なカッコつけてる!」


みんなに優しいって、そんなことは無い…と思う。


「う、うっせ。…うん、それに言ってたよ。俺のこと弟みたいだって。意地悪もされるし、本当に意識されてないみたい。少し勘違いしてた時期もあったけど、もうそんなバカな考えは捨てた。あはは、笑えるよね。1番気になってた人は俺の事は気にも留めないなんて」


確かに弟みたいって言ったことはあるし、好きな子に意地悪したくなるのは当然じゃないのかしら。ま、まだ取り返せる。そう思い、私は


「きっと弄ばれてたんだ、実は腹黒なのかもね」


崩れ落ちた。

は、腹黒…。弄んでなんか無いのに。

うぅ…。


「えー?全部計算尽くってこと?それだったら…最低だね。女の私でも引くわぁ。まぁそうは言っても確証ある話じゃないんでしょ?これ以上言うのはあんまりよろしくないね。やめやめ」


「うん、これで分かったろ。この寮に居ても正直気を使うので少し疲れるだけで、恋愛になんて発展しないって」


「あー、そうだね。そっかー。じゃあ寮出てみたら?他に探してみれば新しい出会いがあるかもよ」


「ここはうちの身内が経営してる、ってか親戚の持ち物なんだよね。ここに住むことが条件で一人暮らしも、こっちの学校にも入れたわけだし…。ここを出たら転校かも」


「じゃあ無しかぁ〜。あ、もうこんな時間だ。バイトがあるから私行くね」



私達は開くドアに直ぐに反応出来なかった。私達を見て真理さんはこう告げた。


「私は最初から気付いてましたよ。堀井は気付いてなかったみたいですけどね。彼を傷付けたり弄んだり、そんな人達に彼は渡せない。彼は私がもらうから」


そのあと、どいてと告げた。私達はリビングへと逃げ込んだ。そう、逃げてしまった。



「私達、苦手意識持たれていたんですね。確かに私はついこの前寮に入ったばかりで、皆さんみたいに堀井先輩に慣れて無いですが…。別に苦手とかじゃ無いのに…」


静香ちゃんがポツリとこぼした。



「正直なところ、このまま1年過ごすのも良いと思っていました。ですが、保科さんに負ける訳にはいきません。私は今年本気で彼と付き合いたいと思います」


負けませんよ、と愛ちゃんが告げた。



「私もみんなと一緒に、堀井と一緒に過ごすなら良いかと思っていたけど。流石に木刀で殴ると思われてるなんて心外だ。絶対撤回させてみせる」


だから私は堀井を貰う、と結衣ちゃんは言う。



「私も。計算で彼を振り向かせるなんて、もうそんな綺麗な手は使わない。本気で彼を落としてみせるわ」


私はそう宣言する。



「わ、私はまだこの気持ちが「好き」なのかよく分からないです。でも、先輩とお話出来るように頑張りたいと思います」


静香ちゃんは、そう目標を立てる。



「わ、私は…。堀井の事なんか…。ううん、意地を張るのは辞めるって決めた」


楓ちゃんは本心を告げると決心した。



これじゃあ出来損ないの恋愛ゲームね。ヒロインの好感度が最初からものすごく高いなんて。

窓の外を見ると雪の間に黄色い小さな花が咲いていた。

エリスロニウム、タイトルのこれは黄色いカタクリの花です。


よければ花言葉、調べてみてください

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