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水晶とルナには


僕たちは長い長い階段を登り始めた。全員無言のまま、螺旋状の階段を登り続ける。これが最後の階段、頂上へと繋がる道だ。意を決して足を踏み入れる。空を見上げると、陽はとっくに暮れていた。


「くっくっく。ようやく来たか。貴様らの到着を待ち望んでいたぞ」


大きさは人間と変わらないが、赤い目、尖った耳、鋭い歯、翼を持っていた。まさに悪魔だった。


「今日こうしてやってきたこと、感謝するぞ」


僕たちは悪魔が何を言っているのかが全然理解できなかった。


「おまえらが唖然とするのもむりはないな。この俺が、今この世界に何が起こっているのかを説明してやろう」


悪魔は語り出した。


「この世界には水晶を3つ集めると力を得ることができるという伝説がある。だから俺はそれぞれの国の国王を呪い殺し水晶を奪った。これくらいはおまえらも想像できてたかな。で、この話には続きがある。実は、力を得るには後1ピース足りないんだよ。それがこいつ、ルナだよ」


そう言うと悪魔はルナに向かって魔法を放つ。


「ヘルシャフト!」


攻撃を受けたルナは悪魔の元へと引き寄せられる。


「こいつには最後の儀式をしてもらう」


ルナを連れて行き、パチンと指をならすと3つの水晶が現れる。水晶には月光が透き通るように差し込む。ルナの目は完全にいつもとルナじゃなかった。悪魔に支配されていた。


「さあルナよ、詠め」


ルナは術式を詠唱し始めた。


「さあて、邪魔者は潰しておこうか」


悪魔はそう言い、僕たちに飛びかかってくる。戦いが始まった。戦いながらまた悪魔は語り出す。


「俺はこのときを待ってたんだ。ルナが生まれるのを、特別な存在が生まれるのを。ここにおまえらがやってくるのも偶然ではなく必然なんだ。俺がルナにここに来るように魔法をしかけておいたからな。あと半刻もすればこの世界は俺のものだ」


制限時間は30分か。きついな、今までの敵とは格が違う。どんな魔法も簡単に跳ね返されていく。リョーヤと僕はさまざまな魔法を組み合わせ、お互い力を合わせて奮闘するが、悪魔は余裕の笑みを浮かべながら受け止める。残り10分。


「……っ!」


リョーヤが初めてまともに攻撃を受けた。悪魔の魔法は右足にクリティカルヒットしていた。サクヤはすぐさまリョーヤの応援にまわる。サクヤも慣れない攻撃も織り交ぜながら、必死に僕たちを援護してくれていたが、もうそろそろ限界だった。残り5分。僕は覚悟を決める。一か八かの賭けに出る。この魔法に全てを賭ける。その魔法はエンジェルヴィゴーレ。これはルマの図書館で見たものだ。魔法の術式の発音と、魔法の効果をルナに解説してもらった。この魔法は凄まじい攻撃力をほこる。しかしその代償として大量の体力、精神力が削られる。命を落とすことも少なくないという。しかし今は、まさに絶体絶命の大ピンチ。この命賭けて戦うしかなかった。僕は全神経をこの1発に集中させる。


「リョーヤ、閃光弾1発頼む」


僕もリョーヤも悪魔に閃光弾が効かないことはよくわかっていたが、リョーヤは僕の顔を見て迷いなく閃光弾を放った。閃光弾から光が漏れる。その瞬間、僕は魔法を詠唱した。


「エンジェルヴィゴーレ!」


閃光弾の光に遮られ視界が真っ白になっていたそのすきに僕の魔法が悪魔を襲う。悪魔はほんの少し反応が遅れる。もうよけられない。魔法は悪魔の顔に的中した。悪魔は吹き飛ばされ、壁にぶつかりそのまま崩れ落ちる。勝った。僕らの勝ちだ。僕はそのまま横たわった。


禁じられた魔法を使ってしまった。僕は死ぬのだろうか。それでも後悔はない。だって世界を救えたのだから。安心と達成感で緊張の糸が切れ、そのまま深い眠りに落ちていった。


「…………あれっ」


ルナの顔がこんなに近くに、それにさっきから唇が温かい。僕はだんだん意識を取り戻していった。僕はルナにキスされている。疲れがどんどん体から抜けていく。僕は生きている。


「ユウト、目を覚ましたのね。本当によかった」


サクヤは涙目で僕に抱きついてきた。リョーヤとルナも満面の笑みで僕を迎えてくれた。僕は改めて、自分たちの勝利を感じた。自然と涙がこぼれる。4人で抱きついて、喜びを分かち合った。


「でも、ルナもすげーよな。古代の文字読めるわ、こんな癒しの魔法つかえるわで。俺の足の傷も簡単に治ったぜ」


水晶はルナの力で、もう誰にも使えないように封印した。これですべてが終わった。また平和な世界を取り戻した。


「今日はみんなの成功と無事を祝して乾杯にしようぜ」


そう言って、僕、サクヤ、リョーヤ、ルナの4人でラファへと帰っていく。夜空には大きな満月が輝いていた。


おわり

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