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陽に照らされて

「朝だよー、みんな起きて」


朝から元気にサクヤはみんなを起こしてまわっていた。僕は自室の天井ではないことに気づき一瞬焦ったが、すぐにルナ、サクヤ、リョーヤのことを思い出した。


「あっ、ユウト、おはよう。悪いけどルナを起こしといてくれない。いつものことなんだけどなかなか起きないのよね」


サクヤは朝食の準備で忙しそうだったので、ルナのところへ行った。


部屋に入るとすやすやと気持ち良さそうに寝ていた。僕はしばらくルナのかわいい寝顔を眺めていた。


「……ユウト」


不意に声をかけられ驚いた。ルナは僕が見つめていたのに気づいて起きたようだ。僕に向かって手を伸ばしてくる。手をつかんでルナを起こしてやる。ルナは寝ぼけた表情で僕の顔を見つめて、そのまま引き寄せキスをした。頬が紅潮していくのを感じた。僕が真っ赤になって固まっているとルナが口を開く。


「おはようのキス」


「あははは、そうなんだ……」


朝からちょっとしたハプニングもあったが4人揃って朝食が始まる。


「荷物の準備は私とルナに任せて。リョーヤとユウトは昨日に引き続きがんばってね」


「おう」


僕とリョーヤは同時に声をあげる。食事の後、今朝のことが気になったので、こっそりサクヤに聞いてみることにした。


「あの、サクヤ。この国には挨拶に、その……キスする習慣とかあるのか」


「いや、別にないけど」


サクヤはそう言って不思議そうにしていたが、僕が何を言いたいのか理解したらしく


「ああ、ルナのこと。キスされたんだ。嬉しかった」


サクヤはニヤニヤしていた。


「べ、別に。ちょっと気になっただけ」


ユウトってかわいいね、とか呟きながら、サクヤはルナのことを話してくれた。


「ルナはね、実は王と女王の娘なんだ。そのことはルリの記憶にはもうないんだけどね。でも王も女王もつい先日、謎の病で亡くなったんだ」


「…………」


「で、王族の中ではそういうキスの習慣があったみたいよ。だからあれはルナの挨拶なの。記憶なくしても、習慣は覚えてるんだから不思議よね」


「そうだったのか。ありがとう、サクヤ」


「よし、じゃあこれから特訓がんばってきてね。あなたの戦闘能力には期待してるよ」


「うん。行ってくる」


そう言ってリョーヤが待つ小屋へと向かった。


「リョーヤお待たせ」


「おせーぞ、ユウト。じゃあ早速始めるか。今日はムルって技をやろう。これはガードだ」


ガードはこれからの戦闘でとても重要になる。何が起こるかわからない国の外で自分を守らなければいけない。気を引き締めてリョーヤを見た。リョーヤの手本が始まった。


「ムル!」


リョーヤのまわりにガラスのような壁が現れる。


「ユウト、攻撃してみろ」


そう言われ、僕はフゥーを放った。攻撃は壁にあたり、砕け、飛び散った。


「よし。交代だ。次はユウトがガードだ」


「わかった。それじゃいくよ。


ムル!」


僕のまわりにもリョーヤが作ったような壁が現れる。


「フゥー!」


リョーヤの攻撃が僕にむかって迫ってくる。熱の塊が壁に当たる。あたった瞬間は怖くて目をつぶってしまったがなんとか弾けたようだ。しかし目を開けて壁を見るとひびが入っていた。リョーヤがこちらに駆け寄ってくる。


「技の出し方は完璧なんだけどな。壁に力を凝縮させるように集中するんだ。そうすればもっと硬くなる」


「わかった。もういっかい。どんどん技を討ってくれ、リョーヤ」


午前中はガードの練習が続いた。


昼ごはんを食べ、午後からは本格的な戦闘の特訓が始まった。魔法はもちろん、体術、感覚、コンビネーション、すべてを駆使して戦う。


リョーヤの動きは忍者か、と言いたくなるほど素早かった。僕の魔法は全然当たらない。一方、僕はジャンプやガードでなんとか防いでいるが、完全に押されっぱなしだ。それでもリョーヤの攻撃に目が慣れてくると、だんだん反撃できるスキもできてきた。


「2人ともー、今日はこれでおしまいよ」


いつのまにかサクヤが僕たちを呼びに来ていた。もう陽も傾き、あたりは夕日に赤々と照らされていた。


「じゃあ、今日はこの辺で終わろうか。そんだけ戦えるようになったら充分だ。ユウト」


「……ん。ありがとう……」


僕は疲れて声も出ないほどクタクタだった。


家に戻ると荷物はまとめられていた。地図を指差しサクヤが説明を始める。


「まずここから出て、この森を通って、ラムに向かうわ」


いよいよ始まる冒険を目前にして、全員に緊張した雰囲気が漂っていた。ふと外を見ると月はちょうど満月だった。闇の中に輝く一点の曇りもない黄色い光が輝かしくも、なぜか少し不気味にも感じられた。


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