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未知の世界へ

「ここは」


状況の整理が全くできない僕はルナに聞いた。


「ここは私たちの世界だよ。見てごらん」


そう言われてまわりを見渡すと、人を乗せた絨毯が飛んでいる、何もないところにイスが現れる。


「まるで魔法みたいだ……」


僕は感嘆の、声をもらした。


「みたい、じゃなくて魔法なんだよ。私たちの世界、クァラリーユにようこそ」


僕たちはおしゃべりしながら、周辺を見て回った。日常に魔法が飛び交っていた。そして少し疲れたので公園のベンチで休憩していた。


「ルナ〜、今までどこにいたの」


少年、少女の2人組が慌てた様子でこちらに向かってきた。


「ルナ。ほんとに、どこにいたんだ。心配したんだぞ」


「ごめん。リョーヤ、サクヤ」


「でも、無事でよかった。で、この人は」


2人は僕の方を見た。この2人はルナの友達なんだろう。


「この人はユウト。あっちの世界から連れてきたの。これから一緒に冒険する仲間だよ」


2人はへぇと関心していた。


さっきはすっかり忘れていたが、なぜルナが僕の名前を知っているのか不思議に思って聞いてみた。すると当たり前のように、魔法使いだからだよと言う答えがかえってきた。


「そんなことより、冒険って。僕聞いてないよ」


そう、僕は何も知らされていなかった。


「実はな、ルナのやつ記憶をなくしちまったみたいでな。この前から塔に行かなきゃばっかりで……。俺たちのこととか、自分の名前とか、全部忘れたわけじゃないみたいなんだけど……。それで昨日急にいなくなって、今こうして、ユウトと戻ってきたってわけ」


とリョーヤが教えてくれた。


「まあ、そんなわけでこれから俺たちはあの塔を目指す仲間ってことだから、自己紹介ぐらいしておかなくちゃな。俺はリョーヤ。17歳。得意な魔法は攻撃系と特殊系」


「私はサクヤ。18歳。得意な魔法は回復系。よろしく。」


「私は、知ってると思うけどルナ。16歳。この中じゃ一番下だよね。魔法は……あんまり使えないんだよ」


「僕はユウト。17歳」


っていちいち言わなくても魔法でわかってるんだろうけど。


「それで、どうして塔に行くの」


「どうしてって、ルナが行くって言ったからな。こいつの嫌な予感はだいたい正しいんだよ。記憶はなくしちまったが、きっと行かなきゃならない。そのことは絶対だ」


リョーヤは真剣だった。だから僕も真剣に受け止める。


「その塔ってのはあれだよね。あそこにはなにがあるんだ」


僕は遥か向こうにあるとてつもなく大きな塔を指さす。


「うん。あれだよ。でもあそこに何があるのか、誰がいるのかは誰も知らない」


サクヤが答える。


「誰も行ったことないのか。行こうと思えば行ける距離だろう」


「ユウトにはこの世界のことを少し話しておいた方がいいね」


「ここクァラリーユにはあの塔、正式にはルシフ塔って言うの。それを中心に3つの国がある。ここ、ラファ。そしてラム、ルマ。それぞれの国には特殊な魔法結界がはられているんだけど、その外は凶暴な生き物が暮らす危険地帯なのよ。しかも中心に行くほど、生き物は強くなる。だから誰も魔法結界から出ないし、もちろん塔にも近寄らない。そして他国とも関わらない」


サクヤは詳しい説明はよくわかったが、同時に自分が今から危険地帯に足を踏み入れようとしていることもわかった。


僕の不安な思いが顔に出たのかサクヤが声をかけてくれた。


「大丈夫。あなたもこれから魔法を使って強くなるのよ。ね、そうでしょルナ」


「うん、ユウトからは魔法が感じられた。だから魔法でメッセージを送った」


その魔法が、メールとなって僕に届いたってわけか。


「僕、魔法なんて使ったことないよ」


「だからこれから試すんだよ。こっちに来いよ、ユウト」


リョーヤは走って小さな家に僕を連れて行った。オレンジの屋根のかわいい家だった。


「この家の壁は魔法を吸収する。だからもし間違って魔法を乱発しても大丈夫。この家は親父が作ったんだ。壁のあちこちに高度な魔法分解魔法が埋め込まれているんだぜ」


リョーヤは得意げに話した。


「ここからは1番魔法のうまいサクヤに任せるか」


「よし、じゃあまず手でこのポーズを作って」


サクヤは手で輪っかを作るように指示する。僕もサクヤの真似をしそのポーズをとる。


「そしてその中に熱を集めるように精神を集中させて」


精神集中ってどうやって、と思っていたが、見よう見まねで集中を続けているとほんの少し熱が感じられた気がした。


「おっ。できたね。それをフレスって言うのよ。綺麗な赤ね。あなたは攻撃系魔法が得意みたい」


僕がどういうことか尋ねると、


「人によって得意な魔法があるのよ。赤は攻撃系。青は回復系。黄色は特殊系。


ちなみに私は青」


「俺はオレンジだ。要するに攻撃と特殊が混ざった型。で、ルナは残念ながら色がでないんだよな。魔法が使えないわけじゃないんだけど」


僕は自分が魔法が使えたことに驚き、そしてちょっと嬉しかった。


「時間も少ないし早速実践練習だ。俺が魔法で仮想敵を出すから攻撃してみろ。攻撃の仕方はさっきと同じ。熱を作り魔法を思い浮かべそれを相手に向かって押し出す。モーションは自由だ」


「まずは基本の攻撃、フゥーだな。これは熱の球をそのままぶつける技だ。技の発動は基本は技名の詠唱だが、慣れてくれば脳内での詠唱でも発動できるようになる。よしやってみるぞ」


リョーヤのフレスから仮想敵が作り出される。その敵がゆらゆらと僕の方に近づいてくる。僕は構えて集中する。熱が生まれるのを感じた。


「フゥー!」


僕の放った技が敵に命中する。僕は、よしっとガッツポーズをした。


「やるじゃん。ユウト。初めてにしては上出来よ。さすが、攻撃系が得意なだけあって威力もばっちりね」


サクヤは絶賛してくれた。


「うん。よくできてる。この調子で次の技もやろうぜ。次はリドラだ。この技はドラゴンを形づくり相手を襲う」


よし、やってみるぞ。集中力を高める。


「リドラ!」


蛇のようにニョロニョロと技が発せられる。


「あれっ、あんまりうまくいかないや。」


その様子を驚いた様子でリョーヤが見ていた。


「……すごいな。俺、そのニョロニョロが出るまで2日もかかったぜ。で、技が完成するまで1週間。まさかユウトができるとは思わなかった。ほんとに魔法のセンスあるな」


「あはは、そんなことないよ。たまたまだよ」


僕は照れ隠しに笑った。


「今日中に習得できそうだな。頑張ろうぜ」


「うん」


リョーヤにアドバイスをしてもらいながら特訓し日がくれる頃には完全にリドラをマスターしていた。


僕とリョーヤはくたくたになってサクヤとルナのいる家へと戻った。玄関に入り靴を脱ぐ。


「おかえりー、ごはんできてるよ」


サクヤが楽しそうに2人を出迎える。


「サンキュ、サクヤ。ユウトすごくうまくなったぜ。ルナが見込んだだけはある」


「へぇー、すごいじゃない。やるわねユウト」


「僕なんてまだまだだよ。リョーヤはすごいよ。いろんな魔法を使える」


「リョーヤも昔はたいしたことなかったのよ。この調子だとユウトがリョーヤを抜く日もそう遠くないかもね」


サクヤが軽口をとばす。ご飯を食べながらたわいもない会話が続いた。こっちの世界でも食事は変わらないようで、今日はハンバーグを食べた。


食事をしてしばらく休憩するとサクヤが大きな地図を、倉庫から取り出してきた。


「出発は明後日の早朝にしようと思うの。明日は準備とユウトの戦闘訓練に費やすわ」


「俺はそれでいいぜ」


リョーヤは答えた。僕とルナも黙ってうなずく。サクヤが話を続ける。


「今、私たちには圧倒的に情報が足りないと思うの。だからまず3つの国をまわる。そこで情報を集める。それに私たち4人とも魔法結界の外に出るのは初めてだから、本当の実践戦闘経験はまだないしね」


「今日は明日に備えて、もう寝ようぜ」


この世界に来て初めてのことばかりだった僕は、疲れて、すぐに意識は夢の中へと消えていった。


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