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桜の木の下で

静かな部屋に、軽快な音楽が鳴り響く。メール受信の音楽だ。


差出人「ルナ」


本文:助けてください。桜の木の下で待ってます。


僕がいつも通りベットに寝転がりスマホをいじっていると、こんなメールが届いた。全く差出人に見覚えもないし、いつもなら、いたずらメールだろうと無視するところだが、僕はそのメールから目が離せなかった。まるで魔法でもかけられたかのように。


僕の住む街には大きな桜の木が一本立っている。桜の木なんて全国には数えきれないほどあるのに、メールに書かれた桜の木がその木以外であるとは思えなかった。そう思うと僕の足は迷いなくその桜の木へと向かっていた。


なんの根拠もなかったが、予想通り桜の木の下で泣いている少女を見つけた。そしてその瞬間、我に返った。


僕はなぜこんなに慌ててここに来たのだろう。少女を助けなければいけないという衝動に動かされいつの間にかここに立っていた。でも、ここまで来たからにはとりあえず少女に声をかけてみようと思った。


「ねぇ、どうしたの」


声をかけると少女はゆっくりと顔をあげた。かわいい、お嬢様のような雰囲気の子だった。


「助けて」


囁くような小さな、しかし真剣さの感じられる声だった。僕は詳しく話を聞くため場所を変えようと言って少女の手をひき、起こしてあげた。すると少女はこっちに来てくださいと、そのまま僕の手を握ったままカフェへと歩いた。そこはこの街に10年以上住んでいる僕も知らないほどこじんまりとしたカフェだった。


少女がカフェオレを注文したので、僕も同じものにした。本当はブラックで、と言ってみたいところだが、高校生の僕にはブラックはまだまだ大人の味だった。深刻そうだった少女もようやく落ち着いてきたところで、詳しく話を聞かせてもらうことにした。


「えーっと、名前はルナちゃんでいいのかな」


少女はコクリとうなずく。


「ルナちゃんは何に困ってるの」


ルナはしばらく首を傾けて考えていたが


「わかんない。思い出せない。でも行かなきゃならないの」


と言った。どういうことかさっぱりわからなかったがもう少し聞いてみる。


「何しに行くの」


「それもわかんない。……でも……助けて」


ルナの目は再び涙でいっぱいになっていた。


よくわからないまま約束して後悔するかもしれないと思ったが、それよりルナを助けたいという思いのほうが強かった。


「わかった。できる限りルナちゃんの力になるよ」


するとルナの顔はパァっと笑顔になり


「ありがとう」


と僕に抱きついてきた。僕は恥ずかしかったが嬉しかった。絶対にルナを助けてやろうと思った。


「本当にありがとう。でも一つだけ謝らなくちゃいけない。実は、ユウトをここに連れてきたの、私の魔法なんだ」


ルナはそう言うと、聞いたことのない、しかし聞いていて心地よいと感じる言葉を発し始めた。だんだん白い光が僕を包んでいく。視界が真っ白になって世界が広がったと感じた瞬間、僕は芝生の丘の上に座っていた。となりにはルナも座っていた。


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