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世界は不思議に満ちている  作者: FRIDAY
天空都市
92/141

きゅーじゅー、に。

 

 

「――え?」


 眼窩に残留する残光が消えるまでに数十秒。ようやく視界を取り戻した姫森が見たのは、突き抜けるような空だった。

 そんなわけはない。姫森たちがいたのは、完全に屋内だったのだ。空などが見えるはずがない。

 だが、青空は確かにそこにはっきりと見えた。

 ――壁に開いた、巨大な穴の向こうに。


「――あれ?」


 あまりの急展開に認識が追い付かず、姫森の視線は何かを探すかのようにそこらを彷徨う。

 何かを、あるいは誰かを。


 酷く焦げ臭かった。加えて、穴から轟々と風が吹き込んでいるのにかかわらず、暑い。いや、熱いというのか。

 先程まで自分たちが立っていた場所は、しかし元の形をとどめていなかった。

 半円状に、ごっそりと抉り取られている。

 男が立っているところから続くそのクレーターは、まっすぐに直進し、壁の大穴まで続いている。

 超高温度の何かが、床を削り、壁をぶち抜いて走り抜けた痕跡だ。

 その灼熱を物語るかのように、直接クレーターに触れていない周囲の床までもが、どろどろに溶けかけている有様だ。


「――咄嗟の判断としては、成程悪くない。他の三人を背に庇うよりは、射線からよけた方が確かに賢明だ」


 もっとも、そこまでのようだが、とひとりこの場に立っている男はつぶやく。

 姫森だけでなく、水澤も裁縫も無事だ。ずっと向こうにではあるが、姫森と同じように床に伏している。意識もあるようで、少しずつ起き上がりかけているようだったが、


「――はやみん?」


 無意識に、姫森は囁くようにその名を口にする。

 はやみん言うな、と。

 いつもならすかさず返ってくる、そんな言葉は、返らない。


「はやみん、どこ――?」


 彼の姿だけが、この場のどこにも見えなかった。

 

 


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