はち、ご。
足取りも軽やかに。
警戒心など微塵も窺えず。
薄っぺらい、しかしそこの知れない笑みを浮かべたもの。
白衣の男だった。
「………」
早見も裁縫も無言。ただ、有事の際に対しての身構えを崩さない。
男は、少なくとも容姿だけを見るなら、若かった。極東人ではない。目鼻立ちや体格は、西欧人のそれだ。
だが、そんなことがあっていいはずがない。
この島は、無人であるはずなのだ。数百年、人間を閉ざしてきたこの都市は。
それともこの男は、あまり好まれていない技術を使っているとでもいうのか。不老と、そして恐らくは不死の――
先に口を開いたのは、その白衣の男だった。
「――、――――。―――」
しかしその言葉は、早見の全く聞いたことのない言葉だった。少なくとも日本語でも、英語などでもない。
「……おい裁縫。あいつ、今何て言ったんだ」
「“やあ、ようこそ。初めまして”だ。――でも今の言葉は、とっくの昔に滅んだ言葉のはずなんだけど。それこそ、天空都市の浮遊する前後に――」
早見と裁縫のやり取りは小声だったが、聞こえたのだろう、男は、おや、という表情になってやや考える表情になり、咳払いなどすると、
「――ン、ん。これで通じるかな。どうだい? わたしの言葉は理解できるかね?」
日本語で、そう言った。
絶句する三人に構わず、男は浅く両手を広げて見せた。
歓迎の意を表そうとでもいうかのように。
「改めて。ようこそ、天空都市へ。極東からの来訪者というのは実に珍しい――歓迎しよう」




