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世界は不思議に満ちている  作者: FRIDAY
天空都市
83/141

はち、さん。

 

 

 無人の街の中を、三人の人影が歩いていく。

 もちろんそれは、早見と裁縫、水澤の三人だ。姫森はどうしても目を覚まさないため、仕方なく早見が背負って歩いている。


「――しかし」


 いくつ目になるかわからない建物を出たところで、姫森を背負い直しながら早見がつぶやくように言った。


「わけがわからんな。これが、名目上はいえ世界の科学の最先端なのか? 随分とハリボテな感があるんだが……いつからこうなんだ」

「いつからと言うのなら、少なくとも400年前にはまだ科学者を外から入れていたんだから、それ以降と言うことになるね」

「上から全景を見る余裕なんてなかったけど……この島全体がこんな感じなのかな」


 早見の言葉に、裁縫は首を傾げる。


「そうかもしれない……でもそれにしたって、これは変だ」


 裁縫の指摘に、早見も水澤も頷いた。


 街はどこも、死んだように静かだ。

 だが、廃墟というわけではない。

 使おうと思えばいつだって使える状態だ。

 埃だって積もってはいない。毎日掃除されてでもいるかのように、綺麗なものだ。

 だが、生活感はない。

 かつて人がここに生きていたことを示すものが、建物以外に何もない。

 無人どころでなく、何もないのだ。


「どこかのある時点で何か事件が起こって……という雰囲気でもないな。これじゃあ、まるで初めから誰も住んでいなかったみたいじゃないか」


 眉をひそめる水澤の言葉にも、答えられる者はいない。

 ただ、あてもなく歩き続けるだけだ。

 ぶつぶつと、裁縫が何かを呟いている。


「システムの維持は、システムそのものが行うにしても、そのシステムは一体何を護り続けていたんだ? それこそ、魔法使いでもなければ突破できないような防衛機構は……」


 完全に独り言だ。思考に没頭しており、周囲へ注意が向いていない。

 だから、今度は先に早見が気付いた。


「――ちょっと待て」

 

 


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