はち、さん。
無人の街の中を、三人の人影が歩いていく。
もちろんそれは、早見と裁縫、水澤の三人だ。姫森はどうしても目を覚まさないため、仕方なく早見が背負って歩いている。
「――しかし」
いくつ目になるかわからない建物を出たところで、姫森を背負い直しながら早見がつぶやくように言った。
「わけがわからんな。これが、名目上はいえ世界の科学の最先端なのか? 随分とハリボテな感があるんだが……いつからこうなんだ」
「いつからと言うのなら、少なくとも400年前にはまだ科学者を外から入れていたんだから、それ以降と言うことになるね」
「上から全景を見る余裕なんてなかったけど……この島全体がこんな感じなのかな」
早見の言葉に、裁縫は首を傾げる。
「そうかもしれない……でもそれにしたって、これは変だ」
裁縫の指摘に、早見も水澤も頷いた。
街はどこも、死んだように静かだ。
だが、廃墟というわけではない。
使おうと思えばいつだって使える状態だ。
埃だって積もってはいない。毎日掃除されてでもいるかのように、綺麗なものだ。
だが、生活感はない。
かつて人がここに生きていたことを示すものが、建物以外に何もない。
無人どころでなく、何もないのだ。
「どこかのある時点で何か事件が起こって……という雰囲気でもないな。これじゃあ、まるで初めから誰も住んでいなかったみたいじゃないか」
眉をひそめる水澤の言葉にも、答えられる者はいない。
ただ、あてもなく歩き続けるだけだ。
ぶつぶつと、裁縫が何かを呟いている。
「システムの維持は、システムそのものが行うにしても、そのシステムは一体何を護り続けていたんだ? それこそ、魔法使いでもなければ突破できないような防衛機構は……」
完全に独り言だ。思考に没頭しており、周囲へ注意が向いていない。
だから、今度は先に早見が気付いた。
「――ちょっと待て」




