はち、いち。
それは、光の壁にも見えた。
だが、ただの壁ではない。
天空都市を全てすっかり覆いつくしてしまう、光子力の壁。
もはや光の球体と化した天空都市は、もはや絶対防御。
一部の隙も無い。
「――くっ」
歯噛みする。
一目見て直感した。
これが、天空都市の最終防衛ラインだ。
これを突破すれば、天空都市だ。
だが、どこに視線を走らせても、全く入り込む隙が無い。
残りの、たったの50メートルが、酷く遠い。
どうすればいい。
どうすれば。
「――はやみん!!」
また裁縫が叫んだ。しかも、先程よりも緊迫感を増している。
初めは、目の錯覚かと思った。
だが違った。
相手があまりに巨大すぎて、認識が間に合っていないが、信じたくない、というのもある。
光の壁が。
天空都市を覆う光の球が、膨張し始めていた。
壁がみるみる接近してくる。
「あれは――出力はさっきまでの砲剣と同等だ。接触すれば塵も残らず蒸発する!」
裁縫が見ている端末の表示している計器は、軒並み測定不能を示している。
早見は頷かない。
返事もしない。
じっと、迫りくる壁を見据えている。
「――裁縫」
「なんだい?」
「あれが、最後なんだよな?」
低い声で問うてくる早見に、裁縫は意図をはかりかねながらも頷いて返す。
「そのはずだよ。それ以上の防衛機構は、残りの距離的に設定できない――はずだ」
「わかった」
裁縫の推測に、早見は端的に頷くのみだ。
「……早見クン、何をする気だ?」
青白い顔をしながらも、気丈に声を震わせることもなく水澤が早見に声をかける。
「まさか、」
「そのまさかだっ!!」
早見は、絨毯を――急加速させた。
迫る光壁に対し、こちらから一気に距離を詰める。
「はやみん、無茶だっ……!」
揺れに、舌を噛まないよう顔をしかめながら裁縫が叫ぶが、早見は構わない。
行く。




