はち。
――あ、はやみん? やっほー。
「はやみん言うな。何だお前、今何時だと思ってる」
――まあまあ、細かいこと気にしなさんなよ。
「細かくねーよ。俺寝てたんだぞ。熟睡だぞ」
――健康的でいいねえ。
「そうとも。人の安眠邪魔しくさりやがって」
――っはっはー、それは失敬。
「ああ。わかってくれればいいんだよ――それじゃ」
――あ、こら待ちたまえよはやみん。
「はやみん言うなっつーの。……で、なんだ。何の用だ」
――うん。うーん……あ、今日買った漫画、急展開だったよー。面白かった。貸したげようか?
「別にいいよ。俺漫画そんなに読まないし。なんだ、そんな用でこんな真夜中に電話かけてきやがったのかお前。今度こそ切るぞ。いよいよ切るぞ。容赦なく切るぞ」
――待って待って! ええと、ほら、本題はまた別のお話でね。
「本題があるなら最初から入れよ。回りくどい、前置きなんかいらん」
――いやでも、話には手順というか段階というか、とにかくそういうものであって……
「………」
――待ってって! 入る入る! 本題入るから……もう、私だって混乱してるんだよ。よくわかんなくてさ……
「……何だ。何かあったのか?」
――まあ、あったというかなんというか……
「……何かヤバいことか?」
――え?
「危ない話じゃないだろうな? 帰りに誰かに襲われたとか……」
――は? いや全然そんな話じゃないよ。っていうか、今どきそんな小説じみたイベントがあるわけないでしょ。
「……あーまあそうなんだが」
――とにかくさ、明日時間ある?
「明日? っていうかもう今日なんだが……土曜日な。ああ、まあ時間はあるけど。何で?」
――ちょっと相談というか……それじゃあ明日、あ、いや今日か、ターミナルの遊楽街道のさ、エッシャーの噴水わかるよね? そこに来てもらえる?
「それはまあ、いいけどさ。だから何で?」
――用件は会ったら話す。今はどう説明すればいいのかわかんなくてさ……それじゃあ、今日の午前、八時くらい。エッシャーの噴水前で。よろしく。
「え、あ、おいちょっと待て、おい――あー
「……何なんだ? 一体」