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ななじゅうろく。
それは、遠望しても巨大だった。
近づくことを許さない防衛システムの存在もあって、早見はもちろん、世界中を探してもこれほどの距離まで近づいた者はいないだろう。
さすが科学の象徴。その威容は計り知れない。
「――まだどこの機関も追いついてこない。追ってきてはいるみたいだけどね。ボクらが一直線に天空都市に向かっているってわかったから、怖気づいたところも多いみたいだ」
早く確保しないと、小説家も死ぬかもしれないのにね、と擁護するんだか悲観するんだかよくわからないことを言う裁縫。
「……どこから向かっても一緒なんだよな? 例えば真下から入っても」
なんとなく、天空都市の下部に視線を送る早見。そこは、大地からそのまま抉り出してきたかのように岩盤がむき出しだ。裁縫は頷く。
「真下から入っても防衛システムはちゃんと反応するよ。直下の街には砲撃が届かないように調整はされているけど、侵入者を迎撃するには十分な火力だ」
ふーん、と早見は鼻を鳴らして、
ぐ、とやや前傾し、構えた。
「――それじゃあ、このまま突っ込んで行っても問題ないな」




