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ななじゅう。
「それは……どうして」
疑問する早見に対して、これには裁縫は首を振った。
「わからない。明らかに不自然なんだけれど、原因は不明だ。考える時間もあまりない」
「世界中、となると、どうするんだ?」
水澤が訊いた。渦中にいる人物であり、狙われている張本人であるというのに、その態度は堂々としたものだ。
「私は、他に逃げ込めるところは知らないんだが」
「俺のアパートも……無理だろうな」
「そうだね。つまり現状、考えられる限り地上にボクらの逃げ場はない」
「え……どうするの?」
不安げな表情になる姫森に、裁縫はやはり淡々と、
「地上にはない。けれど、この世界のどこにも逃げ場がない、といわけではないよ」
「含みのある言い方だな。地上にない、っていうならどこだ? 空か? 海か?」
「空だよ」
さらっと言った裁縫に、他全員が数拍停止し、そのあとでようやく早見が、
「空って、お前、まさか」
「そのまさかさ」
しれっと、裁縫は言い放った。
「天空都市だよ」




