ろくじう、きゅう。
水澤の部屋に転移すると、部屋の様相は随分と様変わりしていた。
いや、別に模様替えがなされている、というわけではなく、部屋の中央のソファに座る裁縫によって、部屋中に縦横無尽に膨大な数の端末画面が展開されているのだった。
水澤と姫森は、裁縫の正面のソファに並んで座っている。二人とも、状況について行けない、という顔だ。
だが姫森は、現れた早見を見て安堵に表情を綻ばせた。
「はやみん! 帰って来た」
「そう言ったろ。それとお前ははやみんと呼ぶな」
言って、早見は脚を止めずに裁縫の後ろに回った。
端末を覗き込みつつ、
「火急でどうとか言ってたが、どういう感じなんだ?」
裁縫は、端末から視線を動かさずに淡々と答える。
「ボクも多少、気が緩んでいたようだね。機関たちの動きに気付けなかった。それは謝るよ。すまない。――で、現状だが。どうやら今調べてみたところ、かなりひっ迫しているようなんだよはやみん」
「だからお前もはやみんと――あ? ひっ迫?」
裁縫は頷いた。
「科学世界が大荒れだよ」
「よくわからん」
「では物わかりの悪いはやみんにわかりやすく優しい表現をすると」
「お前はどうしても俺を頭の悪いキャラにしたいのか……?」
例によって早見をスルーして、裁縫はさらっと言った。
「日本中、いや世界中の機関がほぼ同時に動き始めた。――もちろん目的は、すーちゃんの“保護”だね」




