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よんじゅーきゅう。



 リビングのソファでボケていた姫森は、三人が戻ってくるとよろよろと起き上がった。まだ若干顔が紅かったが、いくらかはマシになったようだ。様変わりした水澤を見て、早見以上に混乱した姫森だったが、最終的に水澤自身が苦笑付きで、


「まあ、どうしてもわからなければ、二重人格という解釈でも構わないよ」


 と言ったことで一応の決着をみた。


 そういうわけで、四人でテーブルを囲んでの作戦会議である。

 と言ってもまあ、作戦というか、


「これからどうするか、だね」


 裁縫さいほうがまず口火を切った。


「状況を整理しよう。現状、ボクらが抱えている問題は、大きく二つだ」


 指を二本立てて、裁縫が言う。


「ひとつはまず、はやみんの問題だ」

「え、俺?」


 自分を指さして見せる早見に、裁縫は頷く。


「はやみんが世界最後の魔法使いである、ということで、はやみんを拘束したいという機関も、少なからずいる。――とはいえまあ、これはもうひとつの問題に比べれば大したものじゃあない」


 頷き、


「全く大したことじゃない。非常に些末なことだ。どうでもいいとすら言ってもいい」

「いやさすがに言い過ぎだ。早見さんだって多少は傷つくぞ」

「どうでもいいはやみんはどうでもいいから鮮やかにスルーするけど、もうひとつの問題というのはもはや言うまでもないだろう。すーちゃんだ」


 俯く早見を無視して、裁縫は淡々と話を進める。


「世界唯一の小説家であるすーちゃん、殊にすーちゃんの発想力を、世界中の科学機関が軒並み欲しがっているわけだ」

「まあ、私はまだ小説家ではないのだがな」


 水澤の言葉に、裁縫は頷いた。


「そう、それだ。そしてそれがこの問題の解決策でもある」

「そうなの?」

「そうだよお姫ちゃん。説明したことはなかったかな? 無名の間ならば、突然失踪してもただの行方不明として扱われる。だが、世界唯一の小説家が行方不明になったのであれば、それは人類にとっての損失だ。世界が総力を上げて捜索することになるだろう。そうなっては、むしろ科学世界にとって不利になるんだよ。――つまり、一冊でも小説を著して小説家として世界にデヴューを飾れば、少なくともしばらくの安全は約束される」

 

 


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