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よんじゅーさん。

 

 

「――全く、人をいいように使ってくれるがな」


 最前に胡坐をかいて座っている早見は、小さくぼやいた。

 絨毯の飛翔も、加速も、早見の作業だ。さらには音速ぎりぎりの速度による風圧も防ぎ、絨毯を安定させ、自分も含めた四人が万が一にも落下しないようにそれぞれ固定し、その上もしもの襲撃に備えて防護結界まで展開している。

 オーバーワークと言いたい。


「いやあ、軽く言ってはみたんだけれど、本当にできるとは思わなかったよ。さすがだねはやみん、この調子なら宇宙にまで行けるんじゃないかい?」


 しれっと無表情に裁縫が言ってくれるが、早見は「どうだろうな」としか答えない。

 余裕がないわけではない。もちろんこんなことをするのは初めてなのだが、やってみれば案外難しくはなかった。が、だからと言って気を抜いていいわけではない。

 ある程度“切り離して”いるため、早見が全く放置してもしばらくは勝手に進んで行くのだが、もし結界が途切れたりしたらその瞬間に全員死ぬ。墜落死以前に爆圧で死ぬ。


「方角はこっちで合ってるんだよな? 俺はそこまではわかってないぞ」

「いや、問題ないよはやみん。ばっちりだ。敵影もなし。――もうすぐ海上に入るね」


 展開している端末を見ながら裁縫が答える。

 ちなみに、水澤は沈黙しているが別に恐怖に固まっているわけではなく、興味深そうに周囲の景色を眺めている。

 で、姫森はと言うと、


「……何で姫森は、莫迦みたいに口開けて上を見上げてるんだ?」


 このフライトの始まりから頑なに、姫森は上を見上げ続けている。


「何だ、もっと上に行きたいのか」

「違う! 違うよ! 違うからね!?」

「でも確かにもったいないぜお姫ちゃん。下を見てみろよ。絶景だ。人がゴミのようだぜ」

「いや、高すぎてゴミ程にも見えないんだけどな」


 何せ下界は雲海である。人など小さすぎてまるで見えやしない。

 だが、姫森はそれを聞いて喉を鳴らした。


「だって……乗る前にさいほーちゃんが、下を見るから怖くなるんだ、って言うから、下を診ちゃダメだって……」

「そうなのか」

「そういえばそうだったね」


 しれっと頷く裁縫。下を見せたいのか見せたくないのかどちらなのだ。


「何だ、姫森は高所恐怖症だったのか?」

「ち、違うけど……だって高いんだよ? 落ちたら死ぬんだよ?」

「落ちなきゃ死なないだろ」

「そうだけど!」


 涙目で上を見上げ続ける姫森を、ふーんと言いつつ見てから、早見は下界を見下ろしてみる。


「……別に怖くはないけどなあ」


 操縦してるの俺だし、と思ったところで、お、と小さく声を上げた。

 裁縫も、下界を見下ろして頷く。


「海に入ったね。これで半分ってところかな」

 

 


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