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よんじゅー。

 

 

「何はともあれ、西京に行かなくてはならない」


 裁縫はそう言う。


「そこですーちゃんの眼鏡を調達する。そうしないと、何も始められないからね」

「そうは言うけどな……そもそも、水澤さんの部屋ってちゃんと残ってんのか? 結構経つんだろう? それでなくても、どこぞの機関の連中に荒らされているとか」


 早見が言うと、裁縫は首を振った。


「いや、少し前にボクが確認しに行ったときはちゃんと無事にあったよ。だからその点は大丈夫だ」

「少し前って……」

「はやみんと初対面する二、三日前だよ」


 さらっと裁縫は言うが、西京からここまでは結構な距離だ。まあ空間転移を使えば一瞬なのだが。


「って、空間転移は今使えるのか?」


 早見が訊く。昨日変態(早見談)とその仲間に砲撃を受けたとき、あのときはジャミングされていたとかで空間転移は使えなかったのだ。まさかと思って訊いたのに、裁縫は無情にも、


「使えない」


 あっさりとそう言った。


「使えないって……じゃあどうするんだ。陸路で行くのか? マジで遠いんだぞ……」

「はやみんの転移は使えないのかい?」

「無理だな。俺だってどこにでも行けるわけじゃない。少なくとも一度行ったことがあるか、見たことがないと目標が定まらないから」


 そもそも普段は空間転移は端末を使っているのだから、滅多に自前の方は使わないのだが。

 へえ、と裁縫は頷いた。


「それじゃあ仕方ないね。空路で行こう」

「……空路?」

「そうとも」


 何て事のないように、裁縫は言う。


「飛べるだろ? はやみん」


 え、と姫森が早見を見る。水澤もやや心配そうにこちらを見ている。

 背中を冷たい汗が流れていくのを感じながら、早見は、


「飛べるって……飛べる、けど。まさか」

「そうだよ。はやみんの魔法でボクら三人も連れて飛んでいく。そうだね、ここから西京までは直線距離でざっと700キロ弱ってところだ。時速2000キロくらい出せば軽く30分足らずで着けるね」

「時速2000キロって、軽く音速越えてるじゃないか」


 できないことは、まあないのだろうが。


「え……飛ぶの……」


 姫森が、若干顔を青くして恐る恐る訊いてくる。これに対しては裁縫が、


「飛ぶよ。そりゃあもう。ちょっとしたアトラクションだぜ」

「えー……」


 姫森は高所恐怖症とか、そういうのだったっけか。聞いたことはないが。


「まあ、善は急げ、急げば回れ、急いては事を仕損じる、だ。早いに越したことはない、早速出発しよう」

「いやお前、初めの諺以外はそれ急ぐなって言ってるんだけどな?」

「でもまあちょっと面倒が先にひとつあるけれど」


 早見の言葉などまるで聞かず、裁縫は続ける。


「どのみち音速超過で飛ぶんだから結界は張るとして、ついでにステルスと光学迷彩もできるだろ?」

「音速超過は決定事項なのか……まあできるけどな。でもなんで。ああ、見上げられたら困るからか」


 生身の人間がマッハで飛んでるの見たら、そりゃビビるよなあ、通報されるかも、あれ、でもマッハで飛んでる人間って地上から視認できるのか?

 そんなことを疑問すると、裁縫は何を平和なことを、と言う。


「気付かないのかいはやみん」

「はやみん言うな。え、何に?」

「このアパート、昨日のうちからとっくに包囲されてるんだぜ」

 

 


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