よん。
姫森は空間転移で帰宅していったが、早見はちょっと歩いて帰ることにした。そこそこの距離はあるが、考え事をしながら歩くにはいい距離だ。
考え事と言うのはまあ、先程まで姫森と話していたことと関わることだ。
「将来、なあ……」
つぶやく。
大学へ行って、どこかの機関にでも就職して。可もなく不可もなく、そこそこにテキトーに。
それでいいとは思う。それは事実だ。
だが、それでは何か足りないとも思う。
「……まあ、なんであれ、魔法の練習する意味が全くないんだよなあ。もうこんな時代じゃ」
たいていの人間にはよくわからない台詞をつぶやく。
「派手なものになる必要はないんだが、何と言うか、こう、一度くらいぱーっと」
軽く握った拳を、頭上に掲げてみる。
夕闇を背景にそれを見上げて、吐息した。
「青春爆発させてみたいよな」
前にも後ろにも人影はない。だから、気兼ねなく独り言をぼやく。
「主人公にはなれないし、なりたくもないけれど……一生背景の一部のままで、いいんだけれど。でも一回くらい思いっきり暴れてみたいような気はするよなあ――本気で、さ」
言って、はは、と自嘲するように笑った。
若いねえ、とも独白する。
「ま、全部ただの世迷言なんだけどね……っと」
不意に、早見は足を止めた。