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にじゅうきゅう。
「勿論、科学者たちだって気付いていた。その進行の一致には。
「根拠はない。だが、発想力を必要とするのは、科学者も小説家も一緒だ。新たな発想がなければ新技術の開発も物語の創造もできはしない。
「発想することで想像し、
「想像することで創造できる。
「そうだね――そう考えると、発想力の喪失は、もしかするとこの世界から幻想が消えていったことと関係しているのかもしれない。
「知っているだろう? 幻想さ。
「魔法使いや、天使、龍、エルフなどの異族たちの存在だ。
「遥か昔に――そう、古い文献によれば、だいたいあの天空都市が空に上がった頃の話だ。人間は魔法を使うことができなくなり、異族たちは姿を消した。
「原因は、これも不明だ。どうして誰も魔法を使えなくなったのか。どうして異族たちは何も言わずに全て姿を消したのか。
「ともかくそれ以来、歴史は科学が完全に支配している」




