にじゅうはち。
「さて、どこから話したものかな……まあ、どこからと言うなら、始まりから、か。
「事の始まりは、しかしいつからかと言うと、それは正確に精確にはっきりとどこからと言うことはできない。徐々に、徐々に、それは始まっていった。
「いや、終わっていったのかな。
「“発明は1%の閃きと99%の試行である”という言葉を遺した、発明王と呼ばれた科学者が遥か昔にいたことは、キミたちも知っているだろう。
「そう、“閃き”だ。
「いつの頃からかはわからない。だがしかし確実に、科学者はその“閃き”というものを失っていっていた。
「キミたちは恐らく、科学は悠久の歴史においてただの一瞬も停滞することなく進歩発展し続けていると思っているだろう。
「――やっぱりね。
「ところがそれは全くそんなことはないんだ。キミたちだけじゃない、この世界の誰もが――ともすれば、一部を除いた科学者たち自身すらも、そのことには気づいていない。少なくともこの数百年は、間違いなく進歩も発展もしていないんだ。
「ただの、マイナーチェンジとモデルチェンジの繰り返ししかしていないんだよ。
「“閃き”を失ったからさ。
「どうして失われていったのかは、それに気づいた科学者たちにも誰ひとりとしてわかっていない。そしてどうしようもなかった。原因もわからず、対策も思いつかない。
「閃けないんだから。
「どうしようもないままに、科学は停止した。
「そして――そろそろ、キミたちも気付くかな?
「そう、時期がおおよそ一致するんだよ。
「科学の停止、人類の発想力の喪失と並行して、世界で同じく消えていった存在。
「小説家という人々と、ね」




