にじゅうよん。
裁縫と名乗った少女は、早見、姫森の顔を順に見やった。
そして、早見と姫森が何も続けないと見て取ると、
「おいおい早見・遙、姫森・千鶴。こちらがちゃんと名乗ったのに自分は名乗らないとは、これはまた一体どういう了見だい」
「何でそんなに偉そうなのか訊きたいところだが……少なくとも今のお前の呼びかけからして、俺たちは名乗る必要があるのか?」
「あるとも。それが礼儀というものだろう?」
もっともらしく裁縫は頷く。えー、と早見は微妙な表情をしたが、断る理由もないため、
「……早見・遙だ。遙かに早く見る、で早見・遙」
「姫森・千鶴だよ。姫の森に千の鶴、で姫森・千鶴。よろしく、ね?」
うん、と裁縫は頷く。で、と早見が、
「それで、だ。ええと、裁縫」
「やだなあはやみん、つれないじゃないかそんなよそよそしい呼び方で。キミとボクとの仲じゃないか。ボクのことは親しみを込めてさいほーちゃんと呼んでくれ」
「いろいろと言いたいことはあるが華麗にドスルーして……じゃあ、さいほーちゃん」
「なんだいキミはいきなり馴れ馴れしい。そういうものは少しずつポイントを貯めて、距離を詰めてから始めるものだろ」
「お前が呼べって言ったんだろうが!」
思わず両手で座卓を叩いてから、く、と拳を握る。
「話が進まねえ……」
「ふむ。確かにね。――気を付けたまえよはやみん。キミは話を脇に逸らし過ぎだ」
「だ・れ・の・せ・い・だ・と!?」
「……ええと、いいかな」
小さく挙手して、姫森が恐る恐る声を上げる。む、と早見と裁縫が見るのに首をすくめつつも、
「その……私も、いろいろと訊きたいことはあるんだけれども、その前に」
姫森は、自分の隣に座る女性を示して、
「この人……大丈夫なの? なんかもう、息もしていないような気がするんだけれど」




