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世界は不思議に満ちている  作者: FRIDAY
魔法使い
23/141

にじゅうさん。

 

 

「ふむ。しかし、確かにそうだね。そろそろボクも、自分のことをキミたちに開示しないと、これから協力していくにあたって不都合も多いかな」

「いや、協力するかどうかはまた別の話なんだがな」


 座卓を囲んで座る四人。斜向かいに座る早見が半目で言うと、少女は早見に向けて片眉を上げて見せた。


「おやおやはやみん、つれないことを言うじゃないか。それがキミのツンデレ属性なのかい? 誰のお陰でそこの小説家と姫森嬢を助けられたのか、はやみんはもうお忘れかな?」

「はやみん言うなと。――いやまあ、その辺りはそうかもしれないが……」

「それにどのみち、キミはボクと協力していくしかないんだよ。いや、協力というよりは共闘かな、この場合。キミは既に科学世界全域に認識されてしまっているんだよ。さっきの対戦でね。――キミは既に、立派な登場人物のひとりなんだ。好むと好まざるとに関わらず、望むと望まざるとに関わらず、舞台へ登ってしまったのならもう踊るしかないんだよ」


 それどころか、と少女は続ける。


「主人公のキミがいなくっちゃ、物語はどうしたって始まらないからね」


 言われて、早見はあからさまに顔をしかめた。


「……俺は主人公じゃない」

「そう思っているのはキミだけだ。この世界も、この物語も、誰もそうは思っちゃいないんだよ。ちょっとしたセカイ系って奴さ」


 演技めいた大仰な動きで、少女は肩をすくめて見せる。困ったものだね、と。


「主人公は主人公であることを望まず、しかし物語は彼を主人公に進むしかない。――全く、とんだ茶番だね」

「……前置きが長いよお前は。さっさと名乗れ」


 やや声のトーンを落として、早見が言う。おっと、と少女はこれまた多少大げさに驚いた挙動を取って見せ、


「それもそうだね。ボクも、いつまでも自分の代名詞が“少女”だとか“少女X”だとかだと書き手に対して忍びない。しっくりこないものねえ……うん、それじゃあいよいよ改めまして、ボクが誰なのかを名乗らせてもらおう」


 うん、と頷いて、無表情はそのままに、座卓の上に浅く両手を置いて、少女は名乗った。


「ボクの名前は裁縫たちぬいだ。裁判の“裁”に縫合の“縫”、二つ並べてタチヌイと読む。よろしく頼むよ」

 

 


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