じゅうはち。
「御了解、っと――」
広場から数キロ離れた、高層ビルの屋上。
そこの縁に腰掛けていた女性が、端末越しのコードに応じた。
腰まである黒髪をツインテールに束ねた女性だ。全身を黒のゴスロリスタイルに固めており、見れば唇すらも黒に塗っている。
そして、脇に雑に置かれており、そして今まさに女性が取り上げた超長砲塔のスナイパーライフルもまた、闇に溶けるような漆黒でコーティングされていた。
「優男な顔のくせに、秋月って交渉事で上手くいったことって一度もないよねえ……ま、いつものことだけど」
銃身の中ほどにあるスタンドを立て、スイッチで土台となる屋上にパイルを打ち込み固定。銃に寄り添うようにして自身も屋上に寝ころびつつ、端末を起動。画面を数枚同時に展開する。
風向きや気温、湿度などを表示するそれらを見ながら、照準を微調整していく。
「コードD13――対象の確保と障害の武力排除。平たく言えば“なりふり構うな”」
片目側に展開されている照準鏡が、対象に合致するまで一秒足らず。
「同時に意識結界を展開。これで誰も状況を感知できない」
マーカーが示す標的は、小説家と、彼女を連れてきた一般人の前に立つ、少年。
「さっきあいつ、空中回廊から飛び出して空中走ってた気がするけど……ま、別にいいか」
展開されている全てのシステムが、グリーンを告げる。
それを受けて、女性は半ば投げやりとも言えるような軽さで、
「そぅら、派手に行くよ――」
あっさりと、引き金を引いた。