ひゃくとさんじゅーなな。
「水澤さんは、下界に戻ってくれ」
早見の言葉に、え、と水澤は声を上げた。
「下界には姫森がいる。俺が魔法で姫森のところまで送るから」
「でも、そんな」
「ここにいても危ないだけだ」
早見がまっすぐに目を合わせて、言う。
水澤も、視線を逸らすことなく、見返す。
早見の双眸に、悲壮感はない。
ただ、意志があるだけだ。
だから、
「――わかりました」
水澤は、頷いた。
「でも、約束してください。必ず帰ってくるって。それに、姫森さんとの約束も、ちゃんと守るって」
真剣に、言う。
「絶対に生きて帰ってくるって、約束してください」
「ああ――約束する」
早見は笑って頷いた。
それから裁縫の方を向くが、
「ボクは残るよ」
「おい、裁縫、」
「おいおいはやみん、キミはまさか、ひとりでちゃんとこれを海まで運べると思っているのかい?」
端末に手指を走らせながら、裁縫は言う。
「時間と高度からして、陸地を削らずにいられるかどうかはぎりぎりだ。ちょっとでも間違えれば東都に入江が増えるんだぜ――なら、優秀なサポートが必要だろ」
新たに端末を展開する。それは、天空都市の進路図だ。
それでも、早見はまだ何か言おうとしたが――結局、苦笑した。
「そうだな。俺一人じゃ無理か……でも、本当にヤバくなったら無理にでもすっ飛ばすからな」
「なに、はやみんが失敗しなければいいのさ」
ふん、と裁縫は澄ました顔で言う。
だから、早見も笑った。
全身に再び魔法をまとい、両手を力強く打ち合わせる。
「よし、じゃあやるか――これが最後の大仕事だ」