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ひゃくさんじゅう。
“この世界を、よろしくね”
創造者は、そう言った。
“この世界を、よろしくね”
生まれたばかりの“それ”は、意味も分からずにそれを聞いた、
“この世界を、よろしくね”
女は“それ”にそう言った。
泣きそうな笑顔でそう言った。
“この世界を、よろしくね”
男はそれを聞いていた。
拳を白くなるほど握り締め、何も言わずに聞いていた。
“この世界を、よろしくね”
それがどういうことなのか、そのときの“それ”はわかっていなかった。
“この世界を、よろしくね”
だが、“それ”は確かに頷いた。
そのために創られたと、知っていた。
“この世界を、よろしくね”
忘れたことなど、ない。
“この世界を、よろしくね”
創造者は、そう言った。