ひゃくにじゅうはち。
「お前が続けていくものは、“科学”でも“幻想”でもよかったんだ。世界を支え、世界を争ったそのどちらか一方であったなら、それを続けていくことでこの世界が守れるなら――お前は、それでよかったんだよ」
「……なぜ君がわたしを語る、小説家」
声音も低く、目を細め、男は言う。
「君が。この世界の住人でもなく、この世界の過去に生きていない君が、この世界とともに在り続けるわたしの、何を語ることができる」
「それは私が“幻想”だからだよ」
全く臆することなく、水澤は応える。
「お前が“科学”として向き合うから――小説家である私が、そして魔法使いである早見クンが、“幻想”を抱く者としてここにいる。お前がもし“幻想”であったのなら、私たちではない他の誰かが、きっと“科学”としてここにいたんだ」
そう、
「お前は、この世界を護るものとして、この世界を導くものとして、そのように在るだけなんだよ」
ああ、と吐息する。
ようやく、わかった、と。
「ずっと探していた――お前の名。お前は何と呼ばれる存在なのか。私はその名を知っていて、だが思い出せず――今、思い出した。あまりにも単純で、当たり前で、だからこそ思い出せなかった」
言う。
宣告するように。
命名するように。
言う。
「お前は“神”というわけだ」
一歩前に、出る。
「この世界を守り導く、“神”」
指先を、突きつける。
「そして、行く先を見失った“神”だ」