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ひゃくにじゅうなな。

 

 

 水澤の言葉に、男は表情を変えた。

 不可解、だ。


「――どちらでもよかったとは、どういう意味だ」

「そのままの意味だよ」


 小説家は、視線を全く揺らがさない。

 射るように、真正面から見据える。


「お前は、本質的にどちらでもよかったんだよ。どちらでも一緒だったんだ」

「どちらというのは、何と何を指しているのかね」

「わからないか? ――“科学”と“幻想”だよ」


 水澤の言葉に、男は絶句した。

 それにも構わず、水澤は続ける。


「お前は、“科学”でも“幻想”でもよかったんだ。お前が偶然“科学”に創り上げられたから“科学”を続けていくだけで、仮に“幻想”に生まれていたなら、お前は“幻想”を続けていったに違いないんだ」

「根拠のまるでない話だ。それに、そんな仮定は立てるだけ無意味だ」

「そうでもないさ」


 確信をもって、水澤は断言する。


「お前は自分が“科学”として生まれたから、世界のバランスをとるためには“科学”を守るしかなかった。“幻想”を捨てるしかなかった。それだけのことなんだ――何せ、お前の本当の目的は、存在の意義は、“科学”の発展でも、“幻想”の絶滅でもないんだからな」

「――それならば、問おうか」


 静かに、男は問う。


「わたしの存在意義がそのどちらでもないというのなら、わたしは一体何を為そうとしているのかね?」

「簡単なことだ――本当に、簡単で、お前にとっては当たり前過ぎることだったんだ」


 水澤は、答えた。


「お前がやりたかったのは、やろうとしていたことは、やり続けていることは――ただ、この世界を守ることだったんだ」

 

 


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