ひゃくにじゅうさん。
爆発音と、振動が鳴り止まない。
それは、きっとどこかで彼らが戦っているからだ。
だから水澤は、その状況下でも端末に向かっていた。
鍵盤を走る指先は高速だ。
今までで最も速く、書き込み続ける。
眼光は鋭い。
唇も一線に引き結ばれている。
まるで外界の状況をものともせず、彼女は、書く。
そして、
派手な破砕音とともに、壁の一部が外側からぶち破られた。
それを受けて、さすがに水澤は手を止めるが、全く取り乱すことはない。どころか、粉塵の向こうに立つ者に対して、笑みを向けていたりする。
「――やれやれ、はやみんも肝心なところで繊細さが足りないね。もう少しずれていたらボクは壁の中だったよ」
愚痴るようなことを言いながら現れた少女に、ふ、と水澤は笑った。
「やあ――こんなところまで遥々、すまなかったね。裁縫クン」
「いやいや、そんな泥くさいことを言ってくれるなよすーちゃん。ボクのことは是非親しみを込めてさいほーちゃんと呼んでくれ」
「それを言うなら水くさい、だ。さいほーちゃん――助けに来てくれたのか」
壁をぶち破って入って来た裁縫は、なんてことのないように肩をすくめて見せた。
「はやみんをけしかけるのに時間がかかった。遅れて悪かったよ」
「いや、そんなことはないよ。――有り難う」
裁縫は頷いて返し、水澤の横まで歩み寄る。
手を差し伸べて、
「さあ、行こうかすーちゃん。脱出だ。外ではやみんが暴れているけれど、すぐにこっちにも追手は来る。最優先事項は、すーちゃんの奪還なんだからね」
「ああ、そうなんだけど……さいほーちゃん。ひとつ、頼みがあるんだ」
やや言いにくそうな、だが不動の意志を持った水澤の言葉に、裁縫は片眉を上げて返す。
水澤は、こう言った。
「話があるんだ。天空都市の――あの男のところにまで、連れて行ってくれ」