ひゃく、じゅうはち。
「はやみんが突入するまでに、すーちゃんの居場所を特定する」
高速で、端末の鍵盤を叩きながら裁縫が言った。
「特定したら、はやみんの魔法でその座標まで送り込んでくれ。ジャミングが強化されていて、ボクの持っているアルゴリズムでは空間転移ができない」
「わかった。このくらいの距離なら、それで転送できるだろう」
地上2000メートル、天空都市。
そのさらに上空、天空都市を全景できる高々度に、二人は立っている。早見の魔法だ。
頷いた早見は、しかし天空都市を見下ろしたまま、
「――でもさ、裁縫」
「何だい?」
「俺は、全力であそこに突っ込んで、あいつのいる中枢まで向かってもいいんだよな?」
その言葉に、裁縫は訝しげな顔をして、
「それはまあ、できるのならいいけれど……無理はするなよ、はやみん」
「無理はしないさ。帰るところがあって、待ってる奴がいるわけだからな」
ふうん、と裁縫は頷いて、
「まあ、それでもいいんだけどさ……ところではやみん。初めてのそれは、どんな味がしたんだい?」
「は?」
「まあ、奪われた気分というか」
「……よくわからん」
「……情けないねえ」
「うるせ。今はいいだろ、そんなこと」
「そんなことって言うけどね、はやみん……この際だからさらっと言ってしまうけど、お姫ちゃん、あれははやみんのこと好きだぜ。どうすんの?」
「こんなときだからこそさらっと言うなよそんなこと」
「あんなことまでされておいて、気づいていないとは言わせないぜ。はやみんは、お姫ちゃんのことどう思ってるんだ?」
無表情に訊く裁縫に、早見は唇を引き結んで答えない。
じとっと裁縫は早見を見つめる。
早見は視線を逸らした。
「……ま、いいけどさ。考えときなよ。帰った後、これは面白いことになるぜ」
「面白いのはお前にとってだけだろうが……まあ、そうだな。考えとくよ」
それじゃあ、と改めて、天空都市を見下ろす。
千年に渡り天空に君臨し続ける、その都市を。
「――思いっきり行くぞ。青春爆発させる感じで」