第四章 〜痛み〜
登場人物
アイ:AIロボット。人間と同じように話すが、そこに感情という概念はない。
ひかり(14歳):本作のヒロイン。真面目で純粋。お母さんのような性格をしている。
博士(39歳):アイの生みの親。男っぽい喋り口調で、かっこいいおばs・・お姉さん。
【配役】計3人 男:1 女:2
アイ♂:
ひかり♀:
博士♀:
ひかり「お待たせアイ君! ゆかは今日も補習で遅くなるから置いてきちゃった」
アイ「ゆかは本当に勉強熱心なんだね」
ひかり「いや、あの子の場合ちょっと違うけど……」
アイ「違うの?」
ひかり「ううん! 何でもない! 今日は何処か行きたいとこある?」
アイ「ひかりはさ、お母さんのこと好き?」
ひかり「え? う、うん好きだよ」
アイ「ゆかや博士のことは?」
ひかり「す、好きだよ……」
アイ「僕のことは?」
ひかり「え!? えぇとその……」
アイ「好きじゃない?」
ひかり「そんなことない!! あ、いや、ゆかや博士と同じ位好きだよ!」
アイ「どうして?」
ひかり「どうしてって、凄く大切でずっと一緒にいたいって思うからかな?」
アイ「やっぱり僕には理解出来ない」
ひかり「え?」
アイ「好きとか大切とか、今まで教えてもらったことを全部応用しても、理解が出来ない。でも考える度に、頭が痛くなって、ここが苦しくなるんだ。それでもわからないんだ」
ひかり「……そんなの私にもわからないよ」
アイ「好きや大切を知ってるのに?」
ひかり「それを知っていても、どうしてその人のことが大切で好きなのかなんてわかんない。誰かを好きになると苦しいことや、辛いこともあるよ、でもその人が困ってたり、傷ついたりしたら、助けてあげたいし、傷つけた人を許せない」
アイ「それはいいこと?」
ひかり「え?」
アイ「好きになったら、辛くなったり誰かを許せなくなるのはいいこと?」
ひかり「いいことと言うか……」
アイ「ひかりはゆかや僕を好きになって、辛いの?」
ひかり「そうは言ってないよ!」
アイ「でもさっき辛いって」
ひかり「違う! そうじゃなくって!」
アイ「違うの? じゃぁ何?」
ひかり「き、気持ちとか、感情とかそいうのだよ! ちゃんとは説明出来ないけ……」
アイ「何言ってるの? ひかり」
ひかり「え……」
アイ「僕には気持ちや、感情はインプットされてないよ?」
ひかり「あ……」
アイ「感情……博士に頼んだらインストールしてくれるかな? ……ひかり? どうしたの? どうして又泣いてるの? ビックリした? 安心した?(頭を撫でようとする)」
ひかり「(アイの手を弾く)アイ君にはわかんないよ!!!」
アイ「ひか……り?」
ひかり「(はっとする)ご……ごめん」
アイ「なんでそんなこと言うの? 僕にはわからないの?」
ひかり「……あたし今日は帰るね。じゃっ……」
アイ「待ってひかり……行かないで……」
間
アイ(絵本)「ロボットは、考えました、いっぱい、いっぱい考えました。どうやったら心を知ることが出来るか、けど答えは全く見つかりません。ロボットはどうしても心が知りたくなり、旅に出ました。山を超え谷を超え、沢山の街や村に立ち寄りました。旅の途中ロボットはある噂を耳にしました。心を届けてくれる少女の話を」
間(研究所)
博士「精密検査の結果では異常は見当たらないな」
アイ「そっか」
博士「どうしたんだ急に、検査してくれだなんて」
アイ「凄く胸が苦しいんだ」
博士「今もか?」
アイ「うん」
博士「理由はわかってるのか?」
アイ「……わからない」
博士「それじゃぁ調べようがないだろう? 何か気になることかはないのか?」
アイ「今日、ひかりが泣いたんだ」
博士「ひかりが?」
アイ「僕ね、好きとか大切とか何なのか知りたくってひかりに聞いてたの。そしたら、ひかりが泣いて、頭を撫でようとしたら……」
博士「どうした?」
アイ「ひかりが僕の手を弾いて、大きな声でアイ君にはわかんないよ!って言って……ひかりに言われた後、急に胸が苦しくなって何も考えれなくなったんだ。ねぇ博士、どうしてひかりはそんなこと言ったの? なんで泣いてたの!?」
博士「それは、な……」
アイ「僕に気持ちや感情がないから!? それがあればわかる!?」
博士「お、落ち着け」
アイ「ひかりは好きや大切は、気持ちや感情だって言ってた。僕の中には、それはインプットされていないでしょ? だからお願い教えて! 僕に気持ちや感情を入れて!!」
博士「いいから落ち着け! ……残念だが、感情や気持ちは感じたときはデータ化出来るが、それを感じる瞬間や理由はデータ化できないんだ。わかってくれ」
アイ「…………痛くなかったかな?」
博士「何がだ?」
アイ「ひかりの手。僕の手は機械で重くて硬いから、ぜんぜん痛くないけど、ひかりは違うから。あんなひかり見たことない。ひかりは怒っていたのかな? でも僕、どうして怒らしたのかわかんないよ。ひかりはこれからもずっと怒ったままなのかな? ……そんなの嫌だよ」
博士「……いや?お前今、嫌って言ったか?」
アイ「うん、言った。嫌だ。ひかりとこのままは嫌だ! ねぇ博士、どうしたらいい? どうしたら前みたいにひかりが話してくれると思う?」
博士「……謝ればいい」
アイ「謝る?」
博士「ごめんなさいって謝ればいいんだよ。きっとひかりは許してくれる」
アイ「本当!?」
博士「本当だとも」
アイ「(嬉しそうにする)あ、そうだ博士!」
博士「なんだ?」
アイ「謝るときに、一緒に恩返しもしていいかな?」
博士「恩返し?」
アイ「ひかりは毎日いろんなこと教えてくれるから、恩返しがしたいんだ」
博士「ま、まぁいいんじゃないか?」
アイ「ほんと!? じゃぁ僕、機を織りたい!」
博士「は、機!?」
アイ「後、鶴もいる!」
博士「鶴!? ……お前それ、もしかして鶴の恩返しのことか?」
アイ「うんそう!」
博士「……ぷっあははは!」
アイ「どうしたの博士?」
博士「いやいや、別に恩返しは機を織らなくてもいいだ、相手が喜べばなんでもいいんだよ」
アイ「じゃぁなにがいい?」
博士「(まだ少し笑ってる)……そうだなぁ例えばこの間、川で石拾ってあげてたろ?ああいうのでいいんだよ」
アイ「じゃぁ明日ひかりがくる前に拾ってくる!」
博士「ああそうしろ」
アイ君「うん!」
博士「……なぁアイ」
アイ「なに?」
博士「お前はさ、ここに……この村に居たいか? それとも村の外に出てもっと沢山のことが知りたいか?」
アイ「どうしてそんなこと聞くの?」
博士「実は……いや。なんでもない! 悪い変なこと聞いて、もう寝ろ」
アイ「うん、お休み博士」
博士「おやすみ」
間
アイ(絵本)「ロボットは噂を頼りに少女がいる森までやって来ました。森の奥へと進むと、小さな音が聞こえてきました。『バイオリンの音?』ロボットは不思議に思い音のする方へと進んで行きました。奥へ奥へいく度に音は大きくなり、川のせせらぎの様な美しい音に変わったり、可愛らしく飛び跳ねたりしました。歩き続けるとロボットは森で一番開けた場所に出ました。そこでは、少女が独りバイオリンを弾いていたのでした。」
初心者の拙い文章ですが、楽しんで頂ければ幸いです。
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最後までお読み頂き誠に恐縮です。
本作品は『D&K Project』にてボイドラ化、進行中です。
公開はまだ未定なので決まり次第発表いたします。
『D&K Project』ホームページサイトURL
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