不意打ちラフィング
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(単なる生意気な男と思ったが)
(なかなかどうして気の回るやつではないか)
(・・・ふむ、ものは試しか)
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「着替え終わったぞ」
「オーケー」
ガチャ
「大き過ぎたりしないか?」
パッと見た感じ問題はなさそうに見える。
「ああ、すまないな」
明らかに容姿と服がアンバランスだが、特に気にした様子は無い。
まあ、裸見られてもOKなやつだし心配無用だったか。
「今日はここに泊めてやるよ」
時間も時間だ。
俺にも良心はあるからな。
「その件なのだが、レイよ」
「なんだ?」
聞き返して数秒の逡巡。
そしてコノハは、
「これから暫く、ここに置いてくれないだろうか」
そんなことを上目遣いに言い放ちやがった。
「・・・」
これもまあ、予想はしてた。
で、覚悟もしてた。
俺って優しいねーハハハ、あーぁ。
「無論、タダでとは言わぬぞ。例えば・・・」
「いいよ」
「なに?」
いいって言ったのに、なんだその顔は。
『なに言ってんのこいつ?』みたいな。
「いいって言ったんだよ」
「・・・」
呆気にとられているらしいコノハ。
優しい俺様が助け舟を出してやろうフハハ(泣)!
「お前は訳ありでここに飛ばされたんだろ?」
「まあ、そうだ」
「別に理由聞くつもりはねえけど、簡単なモンでもないんだよな?」
「・・・そうだな」
「だったら、事が済むまではいてもいい」
このままほっとくのも気が引ける。
さっきの変身、少なくともこの世界(?)の人に出来るとは思わない。
魔東京なんて場所に本当にいたのかもしれない、とか思ったり。
「・・・ふん」
おいコラ。
「なんで鼻で笑う」
「面白い男だと思ってな」
それ褒めてる?
けなされてる気がするんだけど。
「レイよ」
「あん?」
半ばヤケクソ状態の俺。
微妙に棘のある返事になっちまった。
「・・・」
コノハはそこで俯く。
やっぱちょっとキツかったか。
『もうどうにでもな~れ』
なんだっけこのフレーズ、なんて現実逃避してみる。
「レイ」
「だから何だよ」
そこでゆっくりと顔を上げたコノハ。
「ありがとう」
・・・・・・えーっと。
綺麗な微笑み、っていうのか。
漫画のワンシーンみたいな笑顔だった。
要は、現実離れした可愛いさというかなんというか。
あぁぁぁ何考えてるんだ俺は!
恥ずかしいわ!
「・・・」
「レイ?」
落ち着け、落ち着け俺。
クールダウン、クールに行こう。
「別に好きで泊める訳じゃねえぞ?お前が浮浪者になったりすると寝覚めが悪いからだぞ?」
だから落ち着けって俺。
なんでツンデレになってんの?
「それでも構わない。感謝する」
相変わらずの慈愛(?)に満ちた笑顔。
眩し過ぎる・・・
「悪い、トイレ行ってくる」
「トイレ?」
「ちょっと待っててくれ」
「?」
キョトンとしたコノハを置いて緊急離脱開始。
ガチャ、バタン。
「あー・・・」
顔が熱い。
完全に不意打ちだったわ。
見た目だけは一流なのを忘れてた・・・
落ち着くまでここで精神統一タイムと行こう。
そうじゃなきゃ、俺の精神衛生によろしくない。
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